クルナ星の水牛 5
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
タクシーをつかまえて、今度は第10ビルへと向かう。
「さあ、いよいよ本番の始まるよ」
「そうですねっ」
次はいよいよ、実際の仕入れに関しての打ち合わせ。
までも、さっきの人がアドバイス(・・・・・)をしておくって言ってたから、もしかして次もスムーズにいくかもって期待してもいいんじゃないかな?
チュウさんもニコニコしてて楽しそうだし、商売はうまくいってるってことよね?
うん、そう思ってた時期が私にもあったわ......
......
.....
...
「いやいやチュウさん、その値段ではとてもムリだって!!」
「そんなハズあらへんのこと。おたくも十分な利益のあるでしょう?!」
今度の相手は、実際にクルナ星からの商品を取り扱っている部署の人。
ということは、こっちは少しでも安く買いたい、そして向こうは少しでも高く売りたいわけで。
だからチュウさんと先方さんとの間で、バチバチの値段交渉が繰り広げられている真っ最中なの(汗)
念のために商流を確認しておくと、形式上は
ガゴビ星系(クルナ星)
↓
チュウさんの会社
↓
極東貿易株式会社
↓
うちのお客さん(製薬会社)
ってことになるわ。
実際の商品は、ガゴビ2号星からうちのお客さんへ亜空間輸送で直接届けられることになるんだけどね。
(蛇足だけど、クルナ星の農産物はすべていったんガゴビ2号星の集積所へ入庫されて、小分けの後にそれぞれの星へ送られてる)
で、商品の原価にガゴビ星系(クルナ星)、チュウさんの会社、そんで極東貿易株式会社が順に利益をのせていくってわけね。
今回、極東貿易株式会社としては、すでに目標の仕入れ価格がチュウさんに伝えてあって、ガゴビ星系から提示された価格はチュウさんが良識的なマージンをのせても問題ないレベルなんだけど。
なんだけどね......
今回、私だけがチュウさんと仕入れ交渉をするにあたって、日来課長が私のお守り代として、「極東貿易株式会社の仕入れ値は固定でええからね」って言っちゃったのよ。
つまりチュウさんとしては、安く仕入れれば仕入れるほど儲かるってことになるわけで。
そりゃあ、交渉にも力が入るってもんよね?
ちなみに価格交渉に関してはチュウさんから「手出し無用」って言われてるからぼやっと見てるだけなんだけど......っていうかこの2人、なかなか割って入る隙がないわ(汗)
「今年は相克境界が不安定ですので、クルナ星の気温が上がりにくいんです。ですからこれ以上価格は下げられません」
「でも、この数量の買うんよ、この数量。それに、もともと角は使いみちの無くて廃棄されてたの物でしょ?」
補足しとくと、そもそもクルナ星の軌道ってのが中心にある恒星からいちばん遠ぉーいところにあってさ。
ガゴビ1~3号星が人類の太陽系でいうところの地球ぐらいの位置にあるのに対して、クルナ星だけがまるで海王星くらいには離れててね、つまり普通なら極寒の星で、生き物なんて育つはずがないのよ。
ところがクルナ星には相克境界っていう次元の壁があるもんだから、これが温室効果を生み出してて、それでクルナ星は人の住める惑星になったの。
で、さっきの「相克境界が不安定になっている」ってのは、この次元の壁が薄くなったりして穴が開くと、そこから大気圏内の熱が漏れていくから気温が下がる。
寒くなれば水牛ちゃんたちの食べる植物も育ちにくくなるから、結果としてコストアップになる、というわけ。
それと角についてはチュウさんの言うとおりで、かなり脆い上に薄茶色に濃い黄色の水玉っていうまあなんと言うかアレなデザインなものだから、装飾品としての価値は皆無で粉砕して捨ててたらしいわ。
それを「いやいや捨てないで。うちが買いますよー」ってんだから、その分は感謝してくれてもいいわよね?
ダメかな??
「いやそうは言ってもねチュウさん......」
「いやいや、それを言うのであればね......」
「いやいやいや......」
「いやいやいやいや......」
ふたりのギロンは白熱し、ロンリは破綻しはじめる。
もはや何が正しい理由なのかアヤシクなってきてはいるけど、どうやら結局のところ、どんな手を使ってでも相手を言い負かした方が勝ちってことらしい(呆)
面談はとっくに1時間を越え、そろそろ2時間になろうとしているってのに、2人ともそれはそれは楽しそうに値決めというゲームを楽しんでいるわ。
お腹すいてきたなぁ......
「だからそれはね.......」
「いや、そうじゃないのこと......」
あぁそうか......
「いやでもこれがさ.......」
「いやこれも考えてのもらわないと.......」
ここへ来る時のチュウさんのニコニコ顔って、そういうことだったんだなぁ......(遠い目)
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