ムナシイてーこー
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
「いやいやいや、やっぱり私ひとりじゃ無理ですって!」
「うん?そうかな?」
昨日と同じホテルのロビーで待ち合わせてて、ちなみにチュウさんはまだ来ていない。
その間に、日来課長と今後の予定についての打ち合わせ......という名のゴネりんぐ中なの。
ラウンジの朝食は高価なので(うっすーいハムのサンドイッチひと皿でハンバーガーなら約7個分ってどうなのよ?)、日来課長は実家で、私は近くの牛丼屋で朝食をすませてある(メガモリツユダクタマゴニコ)。
で、今になってもショウコちゃんは、精一杯のムナシイ抵抗を試みているというわけ。
だって行ったことのない星で新規開拓なのよ?
未知の大冒険なのよ??
スリル?
わくわく?
いいえっ!!!
アブナイだけですっ!!!
シンドイだけですっ!!!
このショウコちゃんはっ!!
状況さえ許してくれるならっ!!
食べて寝ているだけの生活がしたい女のコなんですっ!!!
(ドンッ!!! ← 心の中で机をたたく音)
ぜぇぜぇ......
「いや......きっと大丈夫よ?多分、アンタなら、持ち前のバイタリティで何とかなると思うんやけどな」
「その『よ?』は何なんですか『よ?』は......それに『多分』って......だって私、まだ原料の新規開拓なんて1回もやったことないのにぃ」
「大丈夫、大丈夫。そのためにこそチュウさんが一緒なんやし、失敗したって命まで取られるわけやあらへんし......あ、でもコータット星のピンク色の狼にだけは気をつけてな?アイツら、若い女の子が大好きやから......」
「ほらぁ!!またそーゆーこと言う!!」
励ましたいのか不安がらせたいのか、真顔で不穏なことを言う日来課長。
ううん、ハッキリ言って不安しかないっ!!
「かちょぉぉ~(泣)いっしょについて来てくださいよぉぉ~(泣)」
「大丈夫、大丈夫。っていうか、ぶりっ子はアンタには似合わへんよ?」
「うー、もぉ......」
そんなやり取りをしていると、奥のエレベーターが開いてピシッとした格好のチュウさんが姿をあらわした。
聞こえないように小さな声でつぶやく。
「やっと来た......もう......スゴい朝寝坊」
そおっとつぶやいたつもりだったんだけど、日来課長の地獄耳には聞こえてたみたい。
「うん?やっぱりアンタ、チュウさんが寝てはったと思ってたんやね?」
「え?」
どういうことです?って聞き返えそうとするより早く、チュウさんがニコニコしながら小走りに近付いてくる。
「早!待たせたかな?」
「いやそんなには」
「お早うございます(めっちゃ待ったっつーの!)」
ってか......あれ?
口臭スプレーでごまかしてるけど、少しお酒の匂いがする。
そういえば目の下に少しクマもできてるみたいだし、もしかして昨夜遅くまで呑んでたのかな?
「相変わらず仕事熱心やね。明け方まで接待してたん?」
「ああ、臭いのするかな?ごめんね。そうよ、昨晩はバナサャタ星からのお客さんと打ち合わせの件があってね」
「ああ、バナサャタ星の人って夜行性やし、アルコールがお茶代わりやもんね?寝ないまんまでそれは大変やわ。じゃあ、ついさっきまで?」
「そうよ、たった今の面談が終わったとこよ」
え?
ってことは、夜通し仕事してたの??
「あのー、課長」
「ん?なに?」
「も、もしかしてチュウさん.....昨日のご飯のあとも、別件の仕事を??」
「そやね、この人はいつもこんなよ。おおかた、チュウさんがこのホテルに泊まってたのも、お金があるからじゃなくてバナサャタ星のお客さんが泊まってたからでしょ?ぎりぎりまで商談をするために」
日来課長がそう言うと、チュウさんが苦笑する。
「さすがのお見通し。日来さんにはバレてるね。ま。いくら僕がパワフルの人でも、夜は寝ないともたへんし、昨夜はたまたまのこと。バナサャタ星人との取り引きができるの機会なんてそうそうあらへんからね」
「確かにね。一晩の睡眠を犠牲にするだけの値打ちはあるわな」
ひえぇ~(汗)
トンでもないことをさらっと楽しそうに話すオジサン達。
昨日に続いて、顔が引きつるのが分かる。
「じゃあ、そういうのわけだから、早速の行こうか?」
「頑張ってきてな」
へっ?
ちょまっ......
「い、いやあの...」
「無事に新規契約が取れてサンプルがもらえたら、その都度地球に送っといて。ああ、分かってると思うけども、転送装置でなく亜空間輸送でお願いな?」
「そこは大丈夫のことよ。僕もいるからね」
いや待って!!
まだ心の準備がっ!!
って.............え???
最後の抵抗を試みるつもりだったのに、日来課長のリアクションを見て、思わずその言葉を飲み込んでしまう。
「潟田さんのこと、请多々关照」
だって日来課長がチュウさんに向かって、お客さんにもしたことの無いほどの深い深いお辞儀をしてくれたんだもの...........
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