ルナステーキ
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
焼き茄子のオードブル、大根のスープ、縦半分に割った伊勢海老にソースを盛って焼いたもの、と続き、口直しの柚子シャーベット。
そしていよいよ....
「お待たせしました、ルナステーキです」
きたーーーっ!!!
これが本物のルナステーキっ!!!
ウェイターさんが、真っ白いお皿を3人の前に並べてくれる。
....ってあれれ?
なんか......思ってたより見た目がショボいんですけど.....?
「ささ、熱いのうちに頂きましょう」
「そやね、商談は一時中断やね」
さっきまで今後の原料仕入れの予定や価格についてやり取りしていたチュウさんも日来課長も、ニコニコしながらナイフとフォークを手に取る。
(.....私?このショウコちゃんは、料理人の皆様に敬意を表し商談はそっちのけ、全力で料理を味わっておりましたが、それが何か?)
白いお皿の上には焼かれたお肉と数切れのスナップえんどうだけ。
チュウさんが「熱いのうちに」とか言ってたけどお肉からは湯気も出ていないし、それどころか表面が少し乾いているようにも見えて、あまり艶々とはしていない。
ステーキソースの類いも無く(頼めばお醤油ベースのそれが付くらしいけど、オーダーする時に「それは超の邪道だから」と頼ませてくれなかった)、気合いの入っているのはすんごく良く切れそうな磨かれたナイフと、先っちょがピンピンに尖ったフォークだけ。
しかもウェイターさんが、わざわざ「このナイフとフォークをお使い下さい」って念を押してきた。
「うーん、やっぱり旨いわ!!」
「好吃の肉やね!!潟田さんもどうぞ」
「あ、はいっ.....って、このナイフ、良く切れるなぁ(汗)」
スッとフォークが刺さり、スッとお肉が切れる。
ほんのりピンクの断面を見ても、肉汁は出てこない。
やっぱりこのお肉、冷めてるんじゃないかな?
どれ、あーん.....
「熱っ!!お、美味しいっ!!!」
完全に油断してた。
口に入れたお肉は見た目に反して熱っつっつで、慌てて噛んだとたん、お口の中に肉汁がドバドバッとあふれて.....じゅーしぃぃぃ!!!
見た目のショボさ(料理人さんゴメンナサイ)とは全然ちがって、お肉の持つポテンシャルが濃縮され、一気に爆発した感じ。
味付けは塩のみらしいけれど、そうとは思えないほどのフクザツな旨味に思考をぶっとばされる。
なにこれ?
なにこれ!!
こっ、これがルナステーキなのねっ!!!
「潟田さん、どう?」
「気に入ったみたいやね?」
「はいっ!!おいしいれすっ!!」
美味しすぎて言葉が上滑りしてるわ(汗)
.......
.....
...
「ふうっ!」
夢中になって食べ終え、余韻にひたってボンヤリしていると、チュウさんが話しかけてきた。
「潟田さんアナタ、最初の見た時はこんな美味しいのとは思ってなかったでしょ?」
「あ、はい。正直ナメてました(汗)」
「ルナステーキを開発したの人は、月基地の料理人のタケシさんという人。彼は元々、お肉を焼くのが上手いの人だったらしいわ。」
「そうでしょうね、こんなに美味しいんですから」
ああ.....空っぽのお皿がむなしい.......
「美味しいの秘密は、まずは特別なの塩と味付けの仕方やね」
「そうそう。お肉に塩を振りかけると、どうしても浸透圧で肉汁が出てくるやん?タケシさんて人は、それを防ぐために元素変換装置でなるべく細かい粒を作って、肉に塩を染み込ませるやり方を思い付いたらしいんよ」
日来課長も会話に参加してきた。
「理屈は単純のやり方やわな?でもその上で、お肉の旨みを一切外への出さずに封じ込めて焼くことのは、それはそれは料理人の腕が要求されるのよ」
「そうなんですね.....すごいなぁ......」
ああぁ.....お皿が下げられていく.......
「そういう特別なの塩があっても、その時その時のお肉の品質を見極めて、お肉の焼けるの音を聞き分け、極上のタイミングので焼き上げるのは簡単のことじゃない。結局、すべては人なのよ。潟田さんなら分かるの人でしょ?」
「ナルホド、仕事といっしょですね?どんなに良い商品であっても、それをちゃんと売るための努力をしないと儲けにはつながらないですもんね?」
「その通りよ!」
「うんうん、そういうことやね!」
チュウさんがにっこりと笑う。
日来課長もどこか満足そうな顔。
........あ、急にやな予感が.....(汗)
「その思いと覚悟があれば大丈夫やね!僕は明日、月へ寄ってそのまま地球に戻るから、チュウさんとふたりで仕入れ頑張ってきてな!!」
「最初は日来さんにも付いてきてもらうの予定やったけど、潟田さんなら大丈夫の人やわ。明日からよろしくね?」
え???
いやちょっと待......
「辺境の危ないの星にも行くけど、アナタなら大丈夫、大丈夫」
「うんうん、問題ないよ。アンタは我が社の精鋭やからね」
いやいやいやいやいやいやいや!!
ちょーっと待てぇぇい!!!!!
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