ポテチ
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
「ふぅ、いいお湯だった~」
と、いつものボケをかましながら暖簾をくぐり、とっとと手続きをすませて宇宙港内の売店でオヤツを買う。
んで出口の近く、たくさん置いてあるイスのひとつに腰掛けて日来課長を待つ。
うりゃっ!とポテチの大袋を開け、形の良い大きめの1枚をつまみ上げてばりばり。
ばりばり、しゃくしゃく........
塩気と油気が口の中を蹂躙したところで、これもさっき売店で買ったレモン風味の炭酸水をプシュッと開ける。
ぐびぐびぐびぐび.......ベフッ!!
うーん.....美味しい。
小腹と心が満たされていくわ♪
でもこのポテチ、ビーフ味のフレーバーでパッケージには「ルナステーキ風味」ってプリントされてるんだけど.......うん!これは絶対に嘘だと思うな。
数百億人もいる人類にあって、ルナステーキを焼くことのできる料理人はたった五百人ほどしかいない。
もともとは月の開拓基地にいた料理人がつくったものらしくて、だからルナステーキって言うのね。
レシピは単純なんだけど、とにかく技術というか職人の腕によるところが大きいらしいわ。
だから、そんな稀少な味がそう簡単に再現できるとも思えないんだよね。
.......いやでも「風味」ならいいのかな???
もちろん一介の勤め人であるショウコちゃんなんかじゃとても口にできるものじゃないから、本当のところは確認のしようがないんだけど(涙)
.......
.....
...
「.......まだかなぁ?」
あちこち行き来する度についでとばかりに大荷物を持っていくから、日来課長はどこの宇宙港でも目をつけられててチェックが厳しく、なかなか移動に時間がかかる。
もしかするとまだ地球にいるのかもしれないわね(苦笑)
ちなみに、ルナステーキについて説明しといてなんだけど、ここは火星です(汗)
今日はバイヤーさんと顔合わせのためにやって来たのよ。
窓から外を見るとどこまでも赤い大地が........続いているわけもなく、地球化の完了した景色は、はっきり言って地球のそれとあんまり変わんない。
まあ太陽から遠い分、地球よりちょっと寒いかな?
ポテチを食べ終え、今度はゆで卵をオデコにゴンッてぶつけて割る。
あ!やばっ!!
割れたカラに少し付いたファンデを見て、さっきお化粧したばっかりだったのを思い出す。
(転送装置に余計な負担がかかるから、転送の前後でメイク落としとやり直しをしなきゃいけないのがちょっとメンドクサイのよね)
......まあ、いいや。
ポテチの空き袋にむいたカラを入れ、つるつるの卵をパクっ!
少しキツめの塩味がついていて美味しい♪
パクパクパク.......
「ふぅ、お待たせお待たせ」
「モグモグ.....遅いですよ課長」
3つあったゆで卵が、全部ショウコちゃんの胃袋におさまったころ、ようやく日来課長がやってきた。
「うん?.......アンタ、おでこ」
「あ、さっきちょっとファンデ落ちちゃって.....目立ちます?」
ゆで卵の入っていた赤いネットとカラの入ったポテチの空き袋を見て、日来課長は理由を察したみたい。
「いいや、まあ大丈夫やと思うわ。化粧よりもアンタ、そのアホ毛の方をなんとかならへんの?」
「いやそのコイツ、今日もなかなかにしぶとくて......」
ハァ.....転送装置もわざわざ、アホ毛まで律儀に再現してくれなくてもいいのにね(汗)
.............................................
宇宙港の駅からリニアに乗り込み、街へと向かう。
2人掛けのシートに並んですわると、でっぷりした日来課長の巨体はなかなかの圧迫感がある。
(う......課長、せまいです)
ノドまで出かかった心の声をのみこんで隣を見ると、窓の外の火星の景色をさえぎるかのようにデンっとすわった日来課長が端末とメモを開いて仕事をしている。
「課長っていつでもどこでも仕事してますよね?」
「このくらい働くのが当たり前。むしろアンタがナマケモノなんよ?」
「そ、そうですか、ねえ?」
火星は日来課長の生まれ故郷なんだし、久しぶりの里帰り (今日は泊まりで私はホテルだけど、課長は実家に泊まるそうよ) なんだから、もう少しこう、感慨みたいなのはないのかな?
「別にかまへんよ。盆と正月には帰ってるんやし、そんなに感慨なんかはあらへんから。それよりも妻をひとり地球に残してきてる方が心配やし寂しいわな」
「あーハイハイ(汗)」
そうそう、日来課長てば客先にも知ってる人がいるくらいの愛妻家だった。
なるほど、こんなかわいい部下と出張だなんて絶対に浮気を疑われるから、わざわざ実家に泊まるってことね!
ふっ、私も罪なオンナよね.......
「んなわけあらへんよ!!」
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