自己紹介しときましょ
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
「はいご苦労さん、じゃあ今日の仕事はこれもよろしくね」
「う! こ、こんなに??」
ジューブ星への出張から帰ってきた翌日だというのに、上司はもう次の仕事を回してくる。
もうすぐ始業のチャイムが鳴る朝のひと時。
となりの部署じゃ同期の歌保ちゃんがのんびりとネイルの出来をチェックしながら優雅に朝のコーヒーなんか飲んでるってのに、私ときたらどうしても言うことを聞かなかったアホ毛をそのままに商品製造の進捗状況チェックで慌ただしい一日を始めている。
ちなみに昨夜の時点で、ニグの実は「宇宙人」資本の加工メーカーへ送り届けるよう手配済み。
それどころか出張の報告書だって、どんなに遅くなってもその日のうちにまとめて提出しないといけないのだ。
それも、うちの部署だけ........
基本的に、うちの上司は仕事を明日へ持ち越さない。
「ねえ課長、うちの部署だけ仕事多すぎません?」
「そんなことないよ。人間、このぐらい働くのが当たり前なんやから」
「そ、そうですか.....ねぇ?」
私のボヤキをあしらいながらも、日来課長はキーボードを打つ手を止めない。
ちなみにフルネームは「日来ジョーナス」。
名前だけ聞くとなんだかスマートなビジネスマンを想像するかもしれないが、実際はでっぷりと太ったおじさんで、地球人と火星人のハーフだ。
火星で生まれ、小さい頃に地球に移住したと聞いている。
このおじさんは毎日大量の仕事をこなし、どの部署へ行っても会社で一番の売り上げをたたき出す見た目に反した切れ者なのだ。
「さっきからアンタ、心の中でひどいこと言ってない?」
ギクッ!!
「そ、そそ、そんなわけないじゃないですか。おほほほほ.....」
まあ面倒見は良いし決して怒ることもないので傍目には良い上司に見えるのだろうけれど、仕事に関してはなあなあは許さず決して甘やかしてくれるわけじゃない。
で、こんな人の部下になったのは、はたして運が良いのか悪いのか???
私はため息を一つついて、自分の仕事に集中する。
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おっとと、ボヤいてたら自己紹介が遅れたわ。
初めまして。
私、ショウコといいます。
潟田ショウコ
それが私の名前。
年齢は非公開、ただし妙齢の女性。
美人かどうかは想像に任せるけど、なるべく可愛い感じでお願いします(ペコリ)。
......
.....
...
で、私ことショウコさんは、この会社に就職して既に5年が経つ。
会社名は「極東貿易株式会社」っていうの。
別に貿易の仕事がしたかったわけではない。
そもそも未だに惑星間、異人種間で取り交わされている国際ルールの基本についてさえ理解できていないしね(汗)
就職活動でいくつか受けた会社で、たまたま受かったからってだけ。
だってお金を稼がないと、ごはんが食べられないじゃない?
「極東貿易株式会社」は人数的には中規模だけど、超広域宇宙生活圏連合を股に掛けてわりと大規模に商売をしている会社。
具体的に言うと、超広域宇宙生活圏連合から色々な原料を集めて「宇宙人」達に加工を依頼し、それを地球人、火星人など「人類」に売るという商売をやっている。
とりあつかう商品は衣料品、食料、生活雑貨といった日常生活における消耗品が多い。
そして私のいる部署であつかっているのは、ズバリ「お薬」。
それもキズ薬とかカゼ薬とかのよくあるお薬じゃなくて、記憶定着に必要とされる特別な「お薬」なの。
それについてはおいおい説明できると思うわ。
とりあえず目の前の仕事を片付けていかないと!
「今日の仕事は今日片付ける」ってのがうちの上司のモットーだけど、実際、日来課長はよく働く。
朝は誰よりも早く会社に来るし、接待の無い日はいつも最終退社だ。
きっと会社の誰よりも、お金を稼ぐのが好きなんだと思う。
いつの間にやら私までが同じペースで仕事をするようになってしまった。
そういや残業せずに帰ったのっていつだったっけ......??
あ、ようやく始業のチャイムが鳴った。
「というわけで、はい、これもよろしく!」
「ひえぇ~」
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