ホルモン屋さんってどこ?
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「あーおなかすいたっ!のどかわいたっ!」
そう言いながら早足で前を歩くショウコちゃんの後をついて歩く。
心なしかショウコちゃん、少し焦っているみたい。
「うん?まあ、そうかもね。人気店だから売り切れちゃうメニューもあるのよ。だから急がないと!」
「売り切れって.....え?私たち、定時で出てきたわよね?」
「そのお店、午後3時半から開いてるからね。いつもフレックスな大勢のおっちゃんたちで賑わってるのよ。ほろ酔いどころか、もう既に何人かはできあがっちゃってるハズよ」
「........何だかちょっと怖いなぁ」
階段を上って下りて、また上る。
この駅は2つの地下路線が重なっていて、どうやら私たちが降りたホームとは違う路線の、それも一番端にある出口から地上に上がろうとしているみたい。
人気店へ向かってるらしいけど、それにしては改札を出ても、階段を上がっても人が少ない。
しかも街灯があんまり無くて、ちょっとうす暗い。
そこそこ人の気配はするんだけど、繁華街ってほどじゃないのかしら?
おっかなびっくり、大通り沿いの歩道を歩く。
どこか離れた場所から、調子の外れた演歌の歌声が聞こえてくる。
酔っぱらって気分良くカラオケを楽しんでらっしゃるオジサンが多いみたいね(汗)
「あ、そこ気を付けて!寝てるおっちゃんがいるから」
「ひゃぁっ!!」
もう少しで踏んづけじゃうところだった.......ヘンな声が出ちゃったわ(汗々)
きょろきょろしながら、心細くなってショウコちゃんと腕を組んじゃう。
まだ心臓がバクバクいってるし、もしかしてここ、女の子ふたりで来ちゃいけない所なんじゃないのかな???
「大丈夫だよ。異なる文化ってだけで、治安が悪いわけじゃないから。歌保ちゃんもたまには、こういう新しい世界で遊ばないと」
「そ、そそそ、そうね、そうよね........(そ、そうかなぁ??)」
何にせよ、か弱い乙女(私のことよ!)には刺激が強すぎるわ(汗)
「ん?何か言った?」
「......いいえ、何にも」
......
.....
...
「ここを曲がってすぐだよ」
そう言ってショウコちゃんは、こぢんまりとした商店街の中へ入って行く。
奥の方にたくさんのカラオケスナック(表現が古いわね)があるみたいで、さっきよりゴキゲンな歌声が大きくなった気がする。
しかもお酒のせいか、ただでさえ音程のあやしい歌声がいくつもの店からいくつもの曲で流れてくるから、それは不協和音すら通りこした混沌な音楽になっちゃってる。
それでも「楽しい!」っていう雰囲気だけは否応なくあふれてて、なんだかストンと腑に落ちちゃった。
なるほどショウコちゃんってば、ここへ「元気」をもらいに来ているのね。
「ふふ、楽しそうだよね?私たちも後で寄ってく?」
「ううん、遠慮しておくわ.....(それはまだちょっと怖いかな.....)」
なんてことを話していたら、じきにお店に着いた。
「よお!ショウコ姉じゃねえか!!」
「平日に来るなんて珍しいな!!さては会社クビになったか?」
「まさかっ!!今日はちょっとヤなことあったから飲みに来たんだってば!!」
「ああ?ヤケ酒はダメだぞ!!せっかくのうまい酒に失礼だからな!!」
「分かってるって!!」
さっきショウコちゃんが言っていたとおり、もう既にできあがっちゃってるオジサン達が3人、店の外に出された小さなテーブルで飲んでいた。
顔見知りみたいで、酔っぱらってるせいか、やたら「!」を付けた大きな声で話している。
「......で、そっちのベッピンさんはだれだ?ショウコ姉のカノジョか??」
「うんそう!!アタシのカノジョ!!歌保ちゃんだよっ!!」
「おいおいダメだろうが!!純真なムスメさんをだまくらかしちゃあ!!こんなオッサンばっかの店じゃなくてよ、もっとこう、ええと.......ワインとか飲ませる店に連れてッてやれよ!!」
「うるちゃいわねっ(笑)アタシ達のことはいいから、だまって飲んでなさいよ!!ささ歌保ちゃん、中へ入るよ」
うん、ここまで約2分間、お店の外でのやりとりだったのよ。
香ばしい香りが外にまでただよってて、どんどんお腹がすいてきたわ♪
......
.....
...
中に入ると、タレの焦げるいい匂いが強くなった。
「いらっしゃい!!これは姉さん、毎度!!」
「こんばんは~今日はカノジョ連れてきたよ~」
「これはどうも!!今後ともごひいきに!!」
「こ、こんばんは......」
お店に入ると、カウンターの向こうから元気な声が届く。
ここでもショウコちゃんは人気者らしいわ。
声の主は、このお店のマスターと思われるお兄さんのもの。
カウンターの向こうで何か焼いているらしく、カンカンっというコテが鉄板に当たるような音がする。
お店の中は横長のコの字カウンターのみで、両端はちょうど2人分くらいの幅がある。
20人くらいのお客さんがいて、私たちは入り口近くの端のそれに案内される。
オジサンだけじゃなくてオバ....お姉さんもいるし、若い男女もいてみんな立ったまま楽しそうに飲んでいる。
えーと......女性は若干、派手な服装の人が多いわね。
「ご注文どうします?」
「そうねぇ.....歌保ちゃん、最初は私が注文しちゃっていい?」
「ええ、おまかせするわ」
生唾を飲み込みながらそう答えると、まるで合わせたかのようにクゥとお腹が鳴る。
うーん、期待が高まるわね。
私もおなかすいたっ♪
のどかわいたっ♪
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