静かな(?)反撃 2
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
「うぅむ..........」
黙って話を聞いていた日来課長も思わず小さくうなる。
先方の身もフタもない言動に、さすがにちょっと呆れたみたい。
見目ウルワシイ人達が作ったから売れるなんて、メーカーとしての矜持は無いのかしら?
確かにレヌ星の人たちって、人類基準だと美男美女ばっかりだけどさぁ........
まあ確かにイメージ戦略ってのは大事よ?
そもそもが「MADE IN OTHER PLANETS」ってのが高級感とイコールなわけだし、それで宇宙人達との交易も盛んなわけだし。
それに何より、そもそも商売ってのはだまし合いでもあるんだしさ。
小娘だった頃ならいざ知らず、大人になったショウコちゃんなら、そんなことなんかでいちいちアツくなったりはしない。
でも、それを差し引いたとしても「性能が他社品より劣っていても」とか、「バカな消費者は」とか......
そんなこと軽々しく言っちゃって良いんだろうか?
うん、良いわけ.....ないわよね。
少なくとも、女の私に向かって言うことじゃないわよね??
え??女に見られてない??
ほっといてよ、ちくそー!!(苦笑)
ま、まあそれにしても、この上司さん、こんな前近代的な考え方でよく出世できたものね??
うーん......
やっぱりこの人.....
いやでも.....やっぱりそうかもしれない......
少しカマをかけてみようかな??
......
.....
...
「では製造場所はレヌ星ということで変更は無しといたします。それで4M変更の導入なのですが」
「それが一番重要だ! そもそもお宅らは......」
はいはい、うるちゃいわよ。
「そもそもレヌ星において、4M変更を採用している企業はひとつもございません。ですので本腰を入れてやるとなれば、それなりに時間がかかります。いってみれば日常の業務において新たに厳密なルールを課すわけですから」
「そもそもそれがおかしいのだ!!その程度のこと、やって当たり前だろう?4M変更ごときの基本的なルールすら守れないなどメーカーとして失格だ!!」
「なるほど。基本的なルール、ですか.....」
「あぁ?」
じっと上司さんの目を見つめる。
ひとみの奥にゆれるもう一つの影がある......
うーん、やっぱりそうかも......
そして心の中で選んでおいた言葉を投げつけてみる。
すると、びっくりするぐらいにこれが当たりだった。
「基本的なルール、それは御社の製品でいうなら、さしずめ『用法・用量を守って正しくお使い下さい』というところでしょうか?」
「...........っ!!」
何を言ってるのだコイツは?という一拍の後に、とつぜん息をのむ先方の上司さん。
ええ、私は気付いちゃいましたよ。
(多分、となりの日来課長もね)
部屋に満ちる一瞬の沈黙......けれども、このショウコちゃん容赦せんっ!!
すかさず畳み掛けるっ!!
「どんなに優れた『お薬』でも本来の目的と違うことに使えば、それは立派なルール違反ですよね?同じメーカーの一員として、そのことのご自覚はございますか??」
「!!!」
黙りこんで目をそらす上司さん。
ひたいに汗が滲み、それはもう分かりやすいほどに動揺しはじめた。
この勝負、相手側の自滅による反則勝ちってことでいいかしらね?
.............................................
えーと......説明、要るわよね?
最近チマタで問題になっている「お薬」の「過剰摂取」。
やたらと正直な物言いを吠えまくった先方の上司さん、どうやらこれをやっていたのよ。
つまりこの人、本来の自分向けのとは違うお薬を飲んで今日の面談にのぞんだのね。
それは多分、「気難しくて怒りっぽい人」向けに調合された多量の「お薬」。
で、攻撃的な性格になるように心にブーストをかけてたってわけ。
いわば心のドーピングよ。
今のところギリギリ違法ではないけれど、製薬会社の人間がやって良いことじゃないし、「極東貿易株式会社」が本気で問題視すれば上司さんの窓際行きはまぬがれない。
「まあそういうわけですので、4M変更の導入は引き続き努力して参りますので、期限を決めずにもうしばらくお時間を頂きたく存じます」
「むぐ..........わ、分かった」
はい、これでどっとはらい。
結局、最初に極東貿易株式会社が申し入れたこととなーんにも変わってないわ(笑)
フフフ.......商談ってのは、大きな声で無理強いするだけじゃダメなのよ。
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