静かな(?)反撃 1
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
「まずわっ!!確認させていただきたいのですがっ!!」
負けじと少し大きな声で、ギャアギャアわめく先方の上司さんの話をぶった切る。
そして続けてニッコリと笑いかけ、相手の毒気を抜く。
ホントは睨みつけて、頭のひとつもパコンっ!と叩いてやりたいんだけどね(苦笑)
で、お二人に先方としての希望事項を挙げてもらう。
上司さんは憮然としてたけど、となりの男のコがなにかとこちらに気をつかってくれたのには助けられたわ。
で、箇条書きにするとこんな感じ。
〇 これまで納入されていた「トクソドンSVFB」と同じ成分であること
〇 レヌ星で製造されたものであること
〇 4M変更を導入させること
ちな、優先順位もこの順だそうよ。
「それでは1つずつみていきますね。これまで納入されていたトクソドンSVFBと同じ成分であること、ということなんですが」
「それは無論だ。同じ物性のものを納入するのは当然だ」
「その場合、何を基準にして同じと判断するのか?ということになりますね」
「はぁ? 同じ成分と言うからには、同じ成分ということだろうがっ!!」
「元素レベルで、ですか?」
「ぐっ!」
言葉につまる上司さん。
さすがに無理な話だってのは分かるみたい。
まあね、元素変換装置を使えばやって出来ないこともないんだけど、それって例えば自動車を1台作るごとに、ネジの1本1本まで強度確認をしてから出荷しろっていうような非常識なもの。
時間も、手間も、そして何よりコストがかかっちゃうのよ。
そんなこと無理強いしたら、どこのメーカーも製造を引き受けてくれなくなるわ。
モチロン、極東貿易株式会社だってね。
「それに元素変換装置で化学的に合成するのならまだしも、このトクソドンSVFBは天然由来の農産物を原料として加工されたものです。どうしてもロットぶれは出てしまいます」
「し、しかし、品質を維持するのはメーカーの務めの筈だろうが!」
「ですから、そのためにあるのがCOA(検査成績書)です。数値が基準内であること、それこそが同品質のものであるという証明になるかと思いますが? これまで極東貿易株式会社は、スペックアウトしたものを納入したことはない筈です」
「.........」
そうなのよ。
そもそも今回の件、COA(検査成績書)の項目はどれも基準値内に収まっていたのよ?
つまり本来ならこっちは「不具合?しりませんよそんなの!」って突っぱねても良かったわけなんだから。
つまり極東貿易株式会社は最初の契約で決められた商品をちゃんと納めてるわけなんだからさ?
それで不具合があったってんなら、最初にトラブルを見越して検査項目を設定しておかなかった先方にだって落ち度はあるってことだもん!
場合によっては、ことが人の生き死ににさえ関わるかもしれないから、極東貿易株式会社としても原因究明と対策対応に骨を折っているのよ?
だから少なくとも、「不誠実」だのなんだのと責められるいわれはないわけで.......
それを自分の思い通りにいかないからって、大声で威圧して従わせようとする方がよっぽど「不誠実」よね?
少なくとも、前向きにビジネスをやろうって誠意が感じられないわ(怒)
「まあそういうわけで、今回の件に関しましてはこれまでの検査項目に加えて、新たに成分「ADC-15」の含有量につきまして項目追加をすることで対応させて頂ければと思っておりますが?」
「む.........」
黙り込む先方の上司さん。
よし、この件はとりあえずここまで。
よくよく考えてみれば多少こじつけの感が無くもないから、相手が余計なことを言い出さないうちに次の話題にうつるわよっ!!!
......
.....
...
「次に、レヌ星での製造をお望みということでございますが......もし、4M変更の導入が困難な場合には、人類圏メーカーへの切り替えもお考えということでしょうか?」
「いや、それはない。ついでに言うと、レヌ星以外の他の惑星産の原料も使うつもりは無い」
「それはまた......何故でしょうか?」
「ああ?分からないのか?」
馬鹿にするようなもの言いと、こちらを見下す視線。
ああなんかイヤな予感......
その予感は、先方の上司さんの続けての言葉で明らかになる。
「美人ばかりのレヌ星の原料を使用しているというのが大事なのだ。最終製品の薬効が同じならば、いや多少ライバル社より劣っていたとしても、『美人が作った』というそれだけで、バカな消費者は鼻の下を伸ばし、購買意欲をかきたてられるのだ!!」
あっちゃーー、やっぱり(汗)!!
そんな本音、ここで言っちゃうのぉ??
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