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み使い様

お読み頂き有難うございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。


「......それでは皆の者、始めよう!!」


長老の話がおわり、みんながいそいそとコップを手にとる。


目の前に並ぶのは山盛りのおにぎりと山の幸、海の幸。

味付けは塩、もしくはお酢のみ。

器はそのほとんどが木でできていて、いかにもスローライフって感じだ。


テーブルやイスはなく、地面にバナナの葉を何枚もしいてその上にお皿を並べ、みんなも私もあぐらをかいている。

前もって上司に言われていたとおり、スカートをはいてこなくて良かった。


「カンパイ!」

「「「「「「カンパイ!!」」」」」」


かつんかつんと木のコップがあちこちで鳴らされ、歓迎の宴会がはじまる。

それにしても......



......

.....

...



この星への出張は初めてだっていうのに、いきなりやらかしてしまった........



「見てたか?」

「見た見た」

「派手ににすっ転んだよな」

「あんまりおごそかな感じしないし.......彼女、み使い様なんだよな?」



ぼそぼそと話す声が聞こえる。

まあビックリしただろうとは思うけどさ、もうちょっと声のボリューム下げてくんない?



うぅ......

ヘコむ私は、照れかくしに手にした木のコップを勢いよくあおる。

すかさず空になったコップへ、となりにひかえている男の人がお酒を注いでくれる。



「あ、すみません。ありがとうございます」



この星のお酒は酒精がそれほど強くはないので、飲み過ぎてもハメを外す心配はない。

けれどもジューブ星人にとっては十分らしく、みんな顔をまっ赤にしてはしゃいでいる。



「み使い様、うたげは楽しんでいただけておりますかな?」



向かいに座った長老がたずねてくる。

年の功なのか、彼は食事をしつつもあちこちに気を配り、こちらに話を合わせるのがうまい。



「ええ、このお酒もとても美味しいです。ジューブ星でとれるくだもののお酒ですか?」

「さようでございます。おおそうだ、お帰りの際には何本かとびきりのものを献上させていただきますので」

「い、いえいえ!!!どうかお気づかいなく!!」



私はあわててその申し出を辞退する。

長老が目を細め、にいっと笑う。



「さようでございますか.....まあお帰りになられるまでにお気が変わられましたら、いつでもお申し付けくださいませ」



うーん......



もともとお酒は強いほうなのでそんなに酔ってはいなかったけど、せっかくのホロ酔い気分がどこかへ行ってしまう。

常日頃、上司にもさんざん言われていることだ。



「彼らにはロハでサービスをするって概念はないからね。アンタも気をつけなイカンよ」

ってね。



ホント、油断はできないのよ。



......

.....

...



超広域宇宙生活圏連合コズミックワールドにはいろいろな種族の宇宙人がいて、さまざまな文化風習があるんだけど、おしなべて私たち地球人と合わないことがいくつかある。



そのうちのひとつが「むじゃきな善意の押しつけ」であり、しかもそれに「ちゃんと対価を要求してくる」ってこと。



さっきのお酒の話にしてもそう。

あくまでも相手が喜んでくれると思っての言葉なのよね。


悪意はない。

多分ない。

そう信じたい。


なんだけど......



今日のこの宴会もそう。

後々あとあと間違いのないように、あらかじめ請求書はもらっているけど、接待される側がお金を支払うってどういうこと???



交際費ってことで経費で落ちるけど、追加の請求書については最悪自腹になる可能性だってある(汗)

私だってムダなお金は使いたくないからね......



き、気を取り直して!!

とりあえず、なんか食べよう!!

私は目の前にあったおにぎりをむんずとつかみ、塩味の効いたお米をほおばった。


「え?なにこれ?うまっ!!」

「どうぞどうぞ、たくさん召し上がってくださいませ。」

「はいっ!!おかわりくださいっ!!」







海の水から作った塩味の美味しさについつい食べ過ぎ、翌日、追加の請求書を渡されることを、この時の私は知る(よし)もなかった.......



次回より本編です。

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