超ニガテな考察ってやつ
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
「じゃあさっそく、分析結果を詳しく検証してみよか?」
「いやあのぉ......さっそく過ぎません?」
レヌ星から帰ってきたのが昨日の夜。
いつものノリで報告書はゆうべのうちにすませてある。
つまり日来課長はすでに状況を把握してる。
で、前もって送ってもらってたサンプルは昨日のうちに日来課長が分析をお願いしといてくれてた。
元素変換装置を使えば、分析結果なんてすぐに出るからね。
それをプリントアウトした紙が、会議室の広いテーブルに重ならないように並べられている。
データはそろってる。
準備はオッケー。
じゃあ今から考察を始めよう。
うん、ここまでは何も間違ってない。
おかしいところはない。
だけどさぁ........まだ、始業のベルすら鳴ってないのよ???
.......
.....
...
ちなみになぜか、歌保ちゃんも会議室にいる。
「いや、なぜって言われても.......まだ始業前だし良いじゃない?」
「まあええやん?彼女の言うとおりまだ始業前やし、違う部署とはいえおんなじ会社の一員なんやから。それに考える頭は多いにこしたことないしな」
「いやモチロン、私も歌保ちゃんに考えてもらえるならありがたいですよ?意外かもしれませんけど、私って頭使うのは超ニガテなほうだし.....」
「「うん、知っとるよ(てるわ)!!」」
いや2人ともぉ........(涙)
歌保ちゃんは出勤途中にコンビニで買ってきたであろうアイスコーヒーを飲みながら、のんびりと分析結果をながめている。
私のぶんも買ってきてくれてあったから、それをじゅるじゅると飲みながら同じように分析結果をながめてみる。
うん、カッコだけマネしても何にも分かんないや.......(苦笑)
そうそう、おみやげに買ってきたあのヘンなウサギとパンダの人形、それはもうキャーキャー言って喜んでくれたわ。
ちょっとうれしかったな。
.......
.....
...
「まずはえーと......第1工程後のサンプルについては、4M変更の前と後で変化無しね。てことは.....」
「うん、材料(Material)の変更についてはとりあえず問題無いかな?」
「はぁ.......な、なるほど??」
えーと、その前にちょっとおさらいしとく??(汗)
4M変更ってのは、品質管理の上で重要となる、
人(Man)
機械(Machine)
材料(Material)
方法(Method)
の4つの変更ってことだったわよね。
「第1工程が終わった段階で成分に差が無いってことは、材料を変えたことによる違いが現れては無いってことよね?つまり材料の変更による影響はほぼ無視できるってことじゃない?」
「あぁ、そーゆーことね!分かったわ」
なるほどね~、やっぱ歌保ちゃんてば頭良いなぁ。
「ま、この後の工程で変化する可能性もあるから、一応ではあるけどね」
「そやね、とりあえずやわ、な」
.....あらん??
「で......成分が大きく、とはいってもごく僅かではあるんだけど、変わってるのはこの5つ目の工程の後ね。」
「む!確かそれって.......ああこれやこれや!」
と、日来課長が手元のメモを確認した後、私がゆうべ提出した報告書の添付資料をあさりだす。
「うん、やっぱりアンタ、良い勘しとるよ!アンタが工場見学の時に感じた違和感3つのうちの1つやわ」
「すごーい!さすがショウコちゃんね」
「そ、そおかな?ふふん!」
思わず胸を張る。
「あ、でも他の2つに関しては、べつだんおかしなとこはあらへんね」
ガクッ......
.............................................
そんなこんなで(もっぱら私以外の)思慮深い考察を重ねた結果、その「違和感」のあった5つ目の工程
が原因だろうとアタリをつけた。
「じゃあまずは、この工程だけを元に戻してもらって、それ以外は今の変更後のやり方でサンプルを作ってもらおか。それをお客さんに提出して効能を確認してもらお?」
「分かりました。ではさっそくメールしときますね」
「たのむわな」
キーン、コーン、カーン、コーン........
ようやく始業のベルが鳴り、私は氷が溶けて味の薄くなったアイスコーヒーをじゅるじゅると飲み干した。
さあ今日もガンバリますかっ!!
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