歌保の朝
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
1日が始まる。
私だってそんなにギリギリの時間に出勤してるわけじゃないけど、朝はいつも自分が遅刻したかのような錯覚におちいっちゃう。
理由はモチロン、日来課長やショウコちゃん達のせい(苦笑)
あの部署はまるで24時間営業みたいに活動してる感があって、そのせいで「あれ?もう始業ベル鳴ったっけ?」って気持ちになるのよ。
もちろん徹夜は認められてないから、皆さんちゃんとお家に帰ってる筈なんだけどね。
それでも夜討ち朝駆けが平常運転になってるせいか、既に皆さん、フルスロットルでお仕事を始めてらっしゃる。
だから、お仕事の邪魔をしないようにおそるおそる声をかけるとしましょうか。
「日来課長、お早うございまーす」
「はいお早う。今日もいい天気やね?」
「そうですね。えーと.....」
キョロキョロ......
ショウコちゃん、まだ来てないのかな?
「ん? どしたん?.....あぁ、潟田さんなら今日まで出張やから」
「そうですか。じゃあ出社は明日から?」
「そやね。何か用事でもあった?」
「いえ......ショウコちゃん、いつも頑張ってるなぁと思って」
ちなみに、ショウコちゃんも頑張ってるけど、一番お仕事をしてらっしゃるのはでっぷりと大きなおなかをしたこの日来課長だけどね。
.......
.....
...
実は日来課長はいつも誰よりも働いていて、そしてこの会社の誰よりも稼いでいる。
それなのに、艱難辛苦に耐えて頑張っているっていうよりも、単にお金を稼ぐのを心から楽しんでいるからってのがすごいと思うのよ。
「やっぱりお金って寂しがりやだから、自分を好きな人に寄ってくるんじゃない?」ってショウコちゃんが言っていたことがあるけど、多分そうなんだろうな。
だから他の課員はもちろん、本来のんびり屋のショウコちゃんまでが、そのペースにあてられちゃって、いつもバリバリと働いている。
決して強制されてるわけじゃない。
だから皆さん、いつも楽しそうに忙しそうに、たくさん仕事をこなしている。
端から見てても、努力と根気が必要な泥臭い仕事だってのは分かる。
それでも何て言うか........そう、華やかなのよね。
「S2」を持ってない私には、それが少し羨ましくもあるし、悔しくもある。
私だって、お仕事で完全燃焼してみたいって思う時があるもの。
ま、こんなこと、毎日ヘトヘトになってるショウコちゃんには口が裂けても言えないんだけど.......(汗)
今だってきっと、レヌ星の宇宙人さん達との丁々発止の駆け引きをしてるに違いないわ。
ううん、ショウコちゃんのことだから、宇宙人さん達の胸ぐらをつかんで怒鳴りつけてるかもしれないわね(汗)
「うん、彼女はようやってくれてるよ。稀に電話で相手にキレ散らかしたりしても、それで契約がなくなるなんてことがないのはスゴいわな」
「えーと......まあ、確かに......」
稀にっていうより、ショウコちゃんの怒鳴り声、しょっちゅう聞いてる気がするのは私だけかしら?
「この仕事、宇宙人達との人脈って重要やからね?僕はどーしても理屈で推し量ってしまうところがあるけど彼女は違う」
「はぁ......??」
「彼女は感情のおもむくままに仕事をする。それで大失敗をすることも多いけど、切り替えも早い。彼女は優秀なんよ。特に良い意味でえらい鈍感なとこがね」
???....えーと......???
「......それ、褒めてます?」
「もちろん。思考にムダなエネルギーを使わず、その分を行動のエネルギーにまわせるのって、これはもう立派な才能やからね?」
「うーん、それは確かにそうかも......(苦笑)」
「何事にもまず着手する、これが大事よ。悩むのは後でいいんよ」
「なるほど、確かにそうかもしれないですね」
(でも無理はしちゃダメよショウコちゃん.......あ!!それと「むちむちウサギ」ちゃんの人形、忘れないでよね?)
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(数万光年離れたある星にて)
「へくちんっ!!」
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