接待
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
「それでは、御社の益々のご発展とレヌ星と地球の友好を祈願いたしまして、乾杯!!」
「乾杯!」
「乾杯!」
3つのグラスがチンと音を鳴らし、甘いものばっかりの会食が始まった。
(うえーっ!あっまー!!)
のどが渇いていたからついゴクゴクとのんじゃったけれど、まるでかき氷のシロップみたいなトロリとしたのど越し(?)と、逃げ場のない甘さ。
酒精は2%以下とそんなに、てか全然高くないのに、間違いなく悪酔いするお酒だ。
「さあさあ、どんどん飲んでください。あ、おつまみもどうぞ」
「ありがとうございます。これ、美味しそうですね」
序盤からすごいピッチで飲まされそうになり、あわててなるべく油っこそうな料理を選んで口へ放り込む。
衣を付けて揚げたお肉とカラフルな野菜が餡にからめられたそれは、見た目は地球の酢豚そっくり。
(あっま!)
なのに甘い、なんだコレ?
まあそれでも、咀嚼しているうちに味覚が慣れてはくるんだけど。
(そういや「アンタの適応力、いや食い意地はスゴイわ!」って日来課長に言われたことがある......)
「いかがです?今日の甘豚は潟田さんの好みに合うよう、甘さ控え目に作らせましたから」
「ありがとうございます、とっても美味しいです(てか、これで甘さ控え目なんだ.....)。あ、グラスが空いてますよ」
「おっと、これはどうもすみません」
飲まされないためには、なるべく飲ませるに限る。
はいはい、こっちのお姉さんにもお酌お酌っと。
モグモグモグモグ........
空きっ腹にお酒ばっかりってのは、確実にベロベロ不可避。
胃に油の壁を作っておくのが、お酒で失敗しない秘訣だもんね。
それにしてもコレ、「酢豚」じゃなくて「甘豚」っていうんだ.......
美味しいからいいけど(笑)
......
.....
...
「それにしても『4M変更』といいましたか?地球の方々は面白いことを考えますよね」
どれだけ酒精が低くても、たくさん飲めば酔っぱらってくる。
レヌ星人のお兄さんが真っ赤な顔で上機嫌に言う。
それにしても.......面白い、ですと??
いやいや、それって宇宙人の感想ですよね?
人類の間ではジョーシキですから。
「私もそう思います。そんなことしてて、日々の変革にブレーキがかかりませんか?」
「べつに変革を否定してるわけじゃないんですよ?ただ、それを報告と合意のうえでやっていただきたいだけで......」
まあ私も、今さら何がなんでも「4M変更」を認めさせようとは思ってないし、一朝一夕にできることじゃないのは身にしみて分かっている。
クローン技術とお薬の力で寿命がのびてる人類と違って、そもそも宇宙人達ってば元から寿命の長い種族が多い。
そうなると、俗に「老害」っていわれてる人達を相手にするぐらいの根気強さがいるのよね。
基本的に宇宙人達ってみんな、ホントこっちの言うことを聞いてくれないから(汗)
......
.....
...
宴もたけなわを通りこして、そろそろシメに麺orご飯ものが欲しくなってきた。
そんなナイスなタイミングでウェイターさんがテーブルにやって来る。
「お待たせしました」
「おっ!これが出てくるってことは、残念だがそろそろコースも終わりだな」
「わーい。でも私、これ大好き」
レヌ星人の2人がうれしそうな声をあげる。
それと対照的に目が点になる私。
出てきたのは巨大なシフォンケーキだった.......
(この後でちゃんと別にデザートも出るってんだから、まったく!!)
そえられた生クリームをたっぷりつけてかぶり!
地球のケーキ屋さんで出てくるのよりふた回りは大きいわね。
「それにしてもホント、潟田さんがうらやましいわぁ」
「ふぇっ?なにがれふか?」
シフォンケーキをワフワフとほおばりながら聞き返す。
シメだからか甘さ控えめで、これはこれでなかなかにおいしい。
お代わりが欲しいな。
「いつも結構な量を召し上がるのに、全然スリムなんですもの。私なんて、お酒飲んだ次の日はぜったいにムクんじゃうんですよぉ!」
「同感だな。僕だって明日の朝は、きっと顔がパンパンになってるよ。まるで『むちむちウサギ』ちゃんみたいにね」
むちむちウサギって.......
あ、忘れるとこだった!!
明日帰る前に、歌保ちゃんに頼まれてたウサギの人形を買ってかなきゃね(汗々)
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