2つの搭乗口
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
「さてと、まずはチェックインからよね」
キャリーバッグをゴロゴロと転がし、人の波に乗ってチェクインカウンターへと向かう。
家族連れはいないみたいで、誰もがウキウキというよりはマジメな顔をしてるように見える。
多分みんな、私と同じ出張組なんじゃないかな?
列に並ぶ。
まずはここで手続きをして、キャリーバッグを預けるの。
だいたい、途中までは飛行機に乗る時と同じかしらね?
お客さんが少ないからなのか、それとも遅い時間だからなのか、カウンターは半分しか開いていない。
ゆっくりと列が前にすすんでいく。
あ、ヤバい......
さっきのコーヒーのせいで、おトイレに行きたくなってきた(苦笑)
まだかな......?
まだかな......?
まだかな......?
どうしよう......
ぼ、膀胱が......
..........膀胱がぁぁっっ!!
「次の方どうぞー(.....このアホ毛の女の人、すごい汗ね?.....どうしたのかしら?)」
......
.....
...
ふぅ......スッキリした(笑顔)
あやうく「人としての尊厳にかかわる大事件」を起こすところだったわ(苦笑)
キャリーバッグを預けて身軽になったところで、その後は保安検査、税関審査、出星審査と順番にイベント(?)をこなしていく。
で、ここからが飛行機に乗る時とはちょっとちがってくるのよ。
空港だったら搭乗口の近くでゲートが開くのを待って、で、それから飛行機に乗るじゃない?
搭乗口の近くにたくさんあるイスにすわって、時間が来るのを待つわよね?
そこまでは同じなんだけど、これが宇宙港になると、なんと搭乗口が「2つずつ」あるのよ。
ここで男性と女性は、別々の搭乗口から先へ進むの。
つまりね、搭乗口が「男性用」と「女性用」の2つに分かれているのよ。
(イメージ図)
[男] ❘ [女]
「20時発レヌ星行きのお客様、まもなく搭乗の時刻となります。お手元に搭乗券をご用意の上、2列に並んでお待ちください」
あ、時間だ。
まるで銭湯の入り口にあるような、でっかく「男」、「女」って書かれた青と赤の暖簾。
受付のお姉さんに搭乗券を確認してもらったら、ショウコちゃんは可憐(?)な女の子だから、当然「女」の赤い暖簾をくぐる。
「んにしてもコレ、誰がデザインしたんだろ?」
この暖簾をくぐる度に、おんなじことを呟いてる気がする。
なんて言うか、「よその国へ間違って伝わっちゃった文化風習」の模範例みたいなのよねぇ......
ちなみに銭湯と大きく違うのは、中に番台が無いこと。
そこまで解放感はないのよ。
なのに、暖簾をくぐった先にはちゃんと更衣室があるの。
面白いでしょ?
搭乗券と同じ番号の書いてある脱衣かごを探してハンドバッグを入れ、それから服もぜんぶ脱いで入れる。
ちなみに、ピアスや指輪なんかのアクセサリーもぜんぶ外さないといけないの。
スッポンポンになったら搭乗券だけを持って、裸足のままペタペタとさらに奥へと進むのよ。
で当然、その先に飛行機なんていなくて、その代わりにいくつもの個室が並んでる所に着くわ。
「えーと、このお部屋ね」
ドアにはそれぞれ部屋番号が書いてあって、搭乗券に印字されてる同じ番号のお部屋に入るの。
ドアには小さなカード入れがあってそこに搭乗券を入れ、お部屋には文字通り身一つで入るのよ。
入ったらしっかりと鍵を閉めておく。
広さにして大体2畳ぐらいの狭いお部屋。
白いツルツルしたプラスチックで壁も天井も覆われてて、部屋の中央には小さな丸印が描いてある。
その丸印の中に立ってしばらく待っていると、どこかからアナウンスが聞こえてきた。
「搭乗券No.J2845 潟田ショウコ 様、本日は弊社のご利用誠に有難うございます。それでは、ご準備はよろしいでしょうか?」
「はーい、お願いしまーす」
さあ、いよいよ転送が始まるわ。
しばらくすると、ブーンって低い音がして物質変換波が部屋中に満ちてくる。
それと同時に、目の前の景色(っても白い壁だけど)が少しずつかすみ始める。
だんだん身体が軽くなり、そしてフワリと意識が浮き上がるのが分かる。
(この瞬間っていつもワクワクするわ。ちょっと気持ち良いのよね)
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