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地球人


太陽系の第三惑星、その名を地球という。


その惑星(ほし)で生まれた、自らを地球人と呼称する生き物達。

今や太陽系を越えて、遥か遠くの惑星(ほしぼし)まで進出した彼等は、超広域宇宙生活圏連合(コズミックワールド)においても、まずまずの敬意と存在感をもって広く知られていた。



.............................................



「来たよ長老!あれ!!輝く宇宙船ふねだよ!!」

「うむ、来られたか.....」



ソーラーパネルの反射で輝く大きな宇宙船ふねが、ゆっくりこちらへと向かってくる。

ちなみに駆動機関の音はしていない。

重力に逆らっての逆噴射もしていない。


「石」を使い、位置エネルギーを吸収しながら降りてくるのだ。



.............................................



かつて地球人が、超広域宇宙生活圏連合(コズミックワールド)に加入どころかその存在すら知らなかったはるかな昔、宇宙に住む様々な種族の間で、大規模かつ長期にわたる戦いが繰り広げられていた。



その原因となったのは、ある「石」である。



ほんの時折、宇宙のあちこちで発見される特殊な「石」。

戦いは、生半可な貴金属などよりはるかに高い価値を持つこの「石」の奪い合いによるものであった。



その特性については後述するが、本来は創造に役立つ「石」を破壊のために使い、結果誰もが特をせず疲弊した全ての種族。

彼等はその反省を踏まえ、超広域宇宙生活圏連合(コズミックワールド)を設立した際、「石」の所有権については特に慎重に議論を重ね、事細かに条項を制定した。



その全てをここに示すことは出来ないが、おおむね次のとおりである。


 「石」の所有権は、それが見つかった場所に住む種族にある。

 「石」を譲渡以外の方法で他の種族から得ることは原則禁止とする。

 「石」を兵器として用いてはならない。

 「石」の新たな用途が発見された場合、その情報については秘匿を禁止とする。



地球人が所有する「石」はまず月、次いで火星の開拓時に発見された。

既にその所有権は超広域宇宙生活圏連合(コズミックワールド)における専門機関へ登録されている。

逆説的に考えれば、「石」を発見して使いこなす事こそが、超広域宇宙生活圏連合(コズミックワールド)への参加資格であるとも言えた。



......

.....

...



何故ここまで「石」の管理に神経質になるのか?



二つの大きな特性により、「石」の保有量が種族間のパワーバランスを崩しかねない力をもたらすためである。



その一つ、それは元素変換。

この「石」は、光、熱、電気などあらゆるエネルギーを吸収し、そして特殊なエネルギー波として放出する。

この特殊なエネルギー波を浴びた物質は、元素レベルで組成を変えられ、別の元素へと変わってしまう。

太古の地球人類が夢見た「錬金術」、それが現実のものとなるのである。



もう一つ、それは慣性制御。

この「石」を真空状態に保ちつつ、エネルギーだけを与えると「石」はその与えられたエネルギーを無尽蔵に蓄えてゆく。

そして蓄えられたエネルギーを、運動エネルギーとして放出することで、ロスの無い慣性制御を行うことが出来るのだ。

人類は、超々高性能なエンジンを手に入れたのである。



.............................................



み使い様の宇宙船ふねが、静かに広場へと降りてくる。


「歓迎の音を!」


長老の指示に従い、笛を吹く者がいる。

木の棒を打ち鳴らす者がいる。

歌をうたう者がいる。


シンプルだが味のある音が鳴り響く中、宇宙船ふねの一部がゆっくりと開き、階段が下りてきた。


階段の先が、そっと地面にふれる。

その近くへ長老が歩みより、平伏する。

他のみんなもそれにならう。


いよいよだ。



「どうもー!こんにちわーっ!!」



おごそかなフンイキをぶちこわす、去年までの「み使い様」とは異なるかん高い声。

そしてカンカンカンという、ややあわてて階段をかけ下りるせわしないクツの音。


長老をはじめ、みんなが思わず顔をあげる。

そんな中、



ツルッ!

「あっ!!あわわわっ!!」



((((((((((え?))))))))))



ズデーン!!!



そこにいた誰もが、階段を踏みはずした「み使い様」がハデな音を立ててすっ転ぶのを見たのだった。




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