朝定食
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
お店の外にまでただよってるカツオ節の暴力的な香り。
今朝のアホ毛はわりと素直だったから時間はある。
ま、もともとその気だったから逡巡皆無で自動ドアの「押して下さい」をぺちん。
お金を入れて、今の時間帯だけ「売り切れ」ランプの灯ってない食券機右下のボタンをぽちん。
給水機でお水をセルフしながら、ほんのしばし待つ。
お店の人のボソッとした無愛想な声と共に、私のお盆がカウンターに置かれる。
「朝定食、そば大盛の玉子トッピングおまち」
「ありがと」
ここは会社の近くにある小さな立ちソバ屋。
朝ごはん作るのがメンドクサイ時によく利用するお店なの。
小さめのおにぎり2個とかけそば(玉子をトッピングしたから月見になってるけど)、それに日替わりの小鉢が付いて、コンビニのおにぎり約2個分のお値段ってどうよ?
しかもこのお店、おそばの大盛は無料なのよ!
安いっ!!
スバラシイっ!!
(あ、でも玉子の分は別料金ね)
会社の近くに立ちソバ屋があるって助かる。 少々の無愛想なんか気にならないし、むしろその方がかえって雰囲気が出るってもんよ!
「いただきマース」
おじさん率の高いお店なんでTPOを気にして、ちょっと小声で言う。
わりばしをパチッと割る。
うん、キレイに割れた。
今日は好いことありそうね。
そう思ってた時期が私にもありました.......(汗)
.............................................
「うー、食った食った......さーて今日もがんばるか!!おはようございマース!」
元気に事務所の扉を開けるとそこは雪国、じゃなくて戦場だった。
うん、自分でも何言ってるのかワカンネ......
「はい、おはようさん。さっそくやけど、アンタがレヌ星で作らせた商品についてユーザーから問い合わせが来とるよ」
「え!もしかしてク、クレームですか?」
「いいや、今の段階ではまだ『確認のお願い』ってレベルやね。他のアンタの仕事は僕がやっとくから、優先して対応してくれる?」
「分かりました」
朝からいやーな予感.....
なんにせよ、しっかり腹ごしらえをしといて良かったわ!!
......
.....
...
席について端末を立ち上げる。
あ、ホントだ、メールが来てる。
CCで日来課長にも入ってるわね。
えーと、なになに......
『御社より購入させて頂いておりますトクソドンSVFBの、先月からの購入分につきまして、これを使用した弊社商品にて不都合が発生しております。』
『具体的には、服用した際に、これまでと比べて苛立ちの感情が増幅されるとの事例が数件報告されております。』
『他社より購入しております原料につきましては、全てが地球圏産であり、4M変更の無いことを確認しております。』
『従いまして、トクソドンSVFBの製造工程におきまして4M変更がなされたかどうかの確認をお願いしたく存じます。』
『また合わせて、これを機会に4M変更の導入を重ねてお願いしたく存じます。』
か.......
うーん.........(汗)
......
.....
...
オブラートに包んではいるけど、最初っから「極東貿易株式会社」の納めた「トクソドンSVFB」がアヤシイと思ってるわね。
機会があるごとに頼んではいるんだけど、確かに宇宙人達って4M変更をなかなか了承してはくれないし、それで私達も日々苦労してるわけだし。
あ、ちなみに4M変更ってのは、
人(Man)
機械(Machine)
材料(Material)
方法(Method)
の4つの変更ってことね。
これらを変更するにあたって客先への通知と許可を得るのを義務付けることで、一定の品質を維持するのが目的なの。
宇宙人達ってば品質を勝手に「改良」してくるし、そういう日々の改善の積み重ねこそが「より良い未来につながる」って思ってるから、絶対に4M変更を導入してはくれない。
「それでええんよ。文化の違いがあるから、僕らの仕事があるんやし、おマンマが食べられるんやからね」
「まあそうですけどね。とりあえずレヌ星へは問い合わせをしますけど......多分見に行く必要は、、ありますよね?」
「そやね」
はぁ.......また出張かぁ........
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