S2
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
今の人類は、大きく分けて2つに分けることができるわ。
うん、そうそう、かわいいショウコさんとそれ以外......なんていうボケはさておいて。
「S2」を持っているか、そうでないか、の2つにね。
わりと大切なことなのにゴメンゴメン、ぜんぜん説明してなかったわね。
これまでにチョイチョイ出てきた「S2」って言葉。
ちなみに「S2」ってのは略称で、正式には......
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えーとね......保証された(stipulated)魂(soul)っていう意味よ。
(え?辞書なんて見てませんが??)
で、これが厳密にはどんなもので、どんな理由で持ってたり持ってなかったりするのかは今のところよく分かってないんだ。
持ってるのかどうかだけは、わりと簡単な方法で分かるらしいんだけどね。
(まあそこは医学的なお話になるんで、私じゃ説明できないけど......)
ちなみに家族のなかでは「S2」を持っているのは私だけで、両親と2人いるお姉ちゃん達も「S2」は持っていない。
どうやら完全なランダムで、遺伝ってわけでもないみたい。
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で、「S2」を持っている人の最大の恩恵はね、「物質転送装置」を使って遠く離れた場所へ行けるってこと。
逆に言うと、「S2」を持ってない人は転送による長距離移動ができないのよ。
だからもし、あなたの目の前に「物質転送装置」があったとしても、「S2」を持ってるのかどうか分からないなら決して使っちゃダメよ!
だって使うと死んじゃうから。
ね、怖いでしょ?(汗)
そもそも「物質転送装置」ってのは、ちょっと高性能な「元素変換装置」なの。
理屈はわりと単純で、遠く離れた2つの場所に装置があったとして、
① 出発地に私、目的地に単一の元素(鉄とかを使うことが多いかな)をセット
② 元素変換で私を鉄に変える
③ ②の変換で得られる波長を反転させて目的地へ送る
④ 目的地で③の波長を鉄に当てて、ショウコさんにする
.......改めて思ったけど、けっこう乱暴なやり方よねコレ(冷汗)
で、「S2」を持ってると④でちゃんと目覚めるんだけど、もし持ってないと.......
うん、お分かり頂けましたでしょうか???
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だから「S2」を持っている人間は、その旨がちゃんと戸籍に登録されているし、仕事だってあまり好きには選べない。
「物質転送装置」を使うことが前提の、割としんどいお仕事をすることが義務付けられているの。
のんびり屋のショウコさんが就職活動で苦労したのも「S2」が原因よ。
本当なら私だって、両親の経営する小さな印刷工場でバイトとかしながら、名ばかりの「嫁入り修行」をしたかったんだけどなぁ......
(え?お相手??なにそれ???)
それ以外の「S2」持ちの特徴としては、私が仕事で取りあつかっているような「お薬」を飲む必要が無いってことかな。
(そもそも飲んだって効かないんだけど.......)
つまり「お薬」を飲まなくても、クローン本来の人格は発生しないのよ。
だから、魂が保証されてる(soul is stipulated)って言うのかしらね?
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でも本音を言うとね、「S2」を持っている方が生きていくのはしんどいと思う。
さっき言った職業選択の自由もそうだし、「お薬」が効かないってことはそれによる感情のコントロールが全くできないってことだもん。
例えばすっごく落ち込むことがあったとしても「お薬」が効く体質なら、その薬効が平常心へと戻そうと、ある種のバイアスがかかるわ。
以前、同期の歌保ちゃんが言ってたけど、いい「お薬」を飲むとすごくリラックスできるんだって。
それがなまじ「S2」を持ってると、自分自身でヘコんだ心と向き合わなきゃいけないんだもの......(涙)
でもこのことは、決して口に出しちゃいけないの。
どれだけ親しい間柄でも、そう、たとえ歌保ちゃんにだって言っちゃいけないことよ。
だって、お仕事はしっかりやらされるけど、その分お金に困ることはないし、そもそも「お薬」を買わなくてもいいんだし。
なにより、宇宙人達の住む星へ気軽に行けるってのは、「S2」を持たない人達からしたら羨望でしかないものね。
きっと世間一般では「S2」を持ってる人達って、さぞかしエリートなんだろうって思われてるんだろうし、実際そういう人達の方がきっと多いとは思うわよ。
うちの日来課長なんかまさにそう。
スマートなカッコ良さはないけど仕事はできるし、いつも最前線で働いてる。
ただ私に限っていえば、休日にボケっと菓子パンを齧ってるだけの、どこにでもいる女なんだけどね......(苦笑)
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