ちょっと昔のこと 3
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
みんなはもう気付いてると思うけど......どうかな?
一応、説明するとね......
「つまりその改良品は、グラスに彫られた溝がミクロン単位で修正されてるんよ」
「ミクロン? それってもしかして......」
「そ、一ミリメートルの千分の一ってこと」
「そんなレベルで?」
「でも......それって何の意味があるのでしょうか?」
ボーゼンとする私を横目に、歌保ちゃんは日来課長に話しかける。
(そうそう、さっき課長が言ってた「我が社始まって以来の才媛」ってのは、モチロン歌保ちゃんのことね。なんでも、入社試験も面接の出来も同期のトップだったんだって)
「無いよ。意味なんてなーんにもあらへんから」
「ですよね......?」
歌保ちゃんの軽く首をかしげるしぐさがカワイイな......って今はその話じゃなかったわ(汗)
とりあえず私も、何かしゃべった方が良いよね?
「え、えーと......その方が高く売れるから、とか?」
「それは誰に? 僕ら人類に? 僕らにとっては、どっちもおんなじ見た目やんね?」
「え、えーとえーと......」
課長がこっちを見てたずねてきたけど、もちろん深い考えなんてない!
言葉に詰まってると、歌保ちゃんが助け舟を出してくれる。
「宇宙人さん達には、この二つの違いがちゃんと認識できてるってことでしょうか? 宇宙人さん達同士の取引でなら、こっちの改良品の方が高値で取引されている、とか?」
わーい!
歌保ちゃんありがとー!!
「うーん、それもちょっと違うんやわ」
「え?」
「え?」
どゆこと?
あ、課長がまたこっちを見た!
「アンタはどう思う?」
「えーとえーと...... 宇宙人さん達にもその違いは分かってはいない、と......」
「うん。それで?」
今にして思えば「わっかりませーん♪」って答えてもよかったハズなんだけど、何でだかこの時はちゃんと答えないといけない気がしたわ。
こういう時、うちの課長ってばヘンに目力があるのよ......
考えろ、考えろ私!!
考えるんだ私っ!!
ポクポク.......
ポクポクポク.......
ポクポクポクポク.......
チーン!!
うん!分からん!!!
ああもう、このシワの少ない脳ミソなんかに分かるわけないっつーのっ!!
こういう時は直感だっ!!
「でも......それでも......その方が高く売れると宇宙人さん達は「本気で」思っている......とか?(当たってる??)」
じーっと私の顔を見ていた課長が不意ににっこりと笑う。
「..........うん、まあ合格やな。「本気」で思ってることもあるけど、むしろ宇宙人達は「無駄な改良」がエエことやと「本気」ではなく「意図的」に考えてはるんよ。」
「意図的に.......」
「はぁ......?」
「ま、追々分かってくると思うけど、二人共、この思考パターンをよくわきまえといてな」
「承知しました。」
「は、はぁ(意図的??分かったような...分からないような???)」
と、日来課長はパンパンっ!!と両手を大きく叩いて、部屋のあちこちで作業をしていた全員に呼びかけた。
みんなが手をとめて一斉にこっちを向く。
「はい!じゃあこのへんで一旦休憩しよか? となりの部屋にシュークリームが買ってきてあるから、一人一個ずつ食べてな」
.............................................
まあそんなことがあった数日後に、いよいよ私達の配属先が決まったんだけど。
同期の間でウワサになっていた「一番仕事のキツイ」という部署。
その日来課長の部署には、てっきり「優秀な」歌保ちゃんが配属されると思ってたのにね......
..
..
..
..
..
..
..
うん、そこに配属されたのは私だった......
何でよっ!!(怒)
「仕方ないやん? 僕のところはどうしても「S2」が要るねんから。僕だってすごく残念なんよ?」
いやそれ、何のフォローにもなってませんが?????(怒)
気に入って頂けましたら、ご評価、ブクマ登録など頂けますと大変励みになります。