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ちょっと昔のこと 2

お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。


「はい、おはようございます。 僕、日来ビグルジョーナスっていいます。 よろしくね」

「「「「「おはようございます」」」」」



簡単な入社式の後、何人かの同期の人達と研修を受けたんだけど、その時の講師が今の上司だったのよ。


後から聞いた話だと、日来課長(うちのじょうし)ってば、やたらと面倒見もそれから人も(・・)いいもんだから、回りからいろんな仕事(ちな、雑用を含む)を頼まれるらしい。

で、断わりゃいいのに


「ええよ」


の一言でなんでも引き受けちゃうもんだから、私より仕事が早いくせにいつも帰るのは私とたいして変わらないという......



この時も、宇宙人相手の貿易の基礎から始まって、超広域宇宙生活圏連合(コズミックワールド)の大まかな勢力図、文化風習の違い、共通言語翻訳機の落とし穴など、実務的な話をしてくれたわ。


生まれた時から身近に宇宙人達の存在を意識することのなかった私にはスゴく新鮮で面白く、というかそれ以上に、これからそんな人達を相手に仕事をしなくちゃいけないのかって若干ビビったおぼえがある。



「ちなみに僕は、火星人と地球人のハーフですから、宇宙人達の気持ちもよく分かるんです。無論、地球人と宇宙人、どちらかへの過度な肩入れは禁物やけどね」


その時は「ほへー」としか思わなかったけど......


.......

.....

...


火星人。


とはいっても、いわゆるタコみたいな異星人のことじゃないわよ。

火星に住んでいる地球由来の人類のことで、れっきとしたホモサピエンスだから。


宇宙人達がホモサピエンスと付き合うにあたって、一番ストレスを感じないのが火星人だと言われているわ。

だから火星は観光地としてはもちろんのこと、移住地としても宇宙人達に人気があるの。


もともと地球化(テラフォーミング)後の開拓にあたって、のんびりした性格の人々を優先的に移り住まわせたのが原因なんでしょうけど、火星人と宇宙人は波長が合うっていうか、気質がよく似ているといわれてる。


それに第一次産業が発達しているから、宇宙人達にとっては珍しい食べ物もたくさんあるし、なにより「石」の数、つまりは元素変換装置の保有数もピカイチ。

ようは物資が豊富ってことで、ある意味、人類のもつ最高の環境なのよ。


そりゃあ人気があるハズよね?


.......

.....

...



「うわぁ......スゴい......」


講義が終わって最初にやらされた仕事は、宇宙人達の工場で作られた商品サンプルの整理だった。

そこそこ広めの会議室をいっぱいに占拠した「MADE IN OTHER PLANETS」の品々。

例えば、



 ギィコシ星の職人によるカットグラス

 ハュミャンド星の青沼ワニで作られた小さなバッグ

 クェゴゴナバフ星のミニ蚕で作られたシルクの手袋

 ネデォ星の人工ダイヤモンド

 ヨーメイ星の青いウイスキィ   

    エトセトラ、etc.、エトセトラ.......



それらはどれも、普段なら高級店でしか手にふれることのできないものばっかりで、私も歌保ちゃんも、他の同期の女の子らと一緒になってキャーキャー言いながら撫でまわしてたの。

それこそ、ヨダレをたらさんばかりに.......

(無粋な男どもは、お酒以外にはそれほど感慨は無かったみたいだけどね.....)


で、もったいないことにホコリをかぶってたそれらを、キレイキレイに拭きながら整理してしまい込んでたんだけど、歌保ちゃんがある事に気付いたの。



「あれ?」

「ん? どしたの?」



歌保ちゃんの左右の手には、まるで宝石のように輝くカットグラスが上下逆さま・・・・・に握られてた。

で、底に貼られたラベルをじっと見つめている。



「これ、片方が試作品、もう一方が試作改良品って書いてあるわ」

「うん、ホントだね。どっちもキレイよねぇ」

「そうじゃなくて......いいえ、潟田ガタダさん(この時は初対面だったから「潟田ガタダさん」って呼ばれてたのよ)のおっしゃる通り、どちらも綺麗なのよ」

「へ?」

「つまり、どこがどう改良されたのか見分けがつかないのよ」



慌てて二つのグラスを手に取り、じっくりと見比べる。



「ホントだ......まったく同じに見えるね」

「でしょう?」


「あ、気が付いた? さすがは我が社はじまって以来の才媛やね」



突然の声にビックリして振り向くと、日来ビグル課長がニコニコしながら立っていた。




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