午後もガンバリましょう 2
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
「はい......はい......申し訳ございません。そういうわけですので、なんとかあと数日のご猶予を頂きたく......はい......はい......」
原料の行方不明を言ってきた工場に「届いてるハズだからちゃんと探してっ!」てメールを送った直後、今度は別の工場から「納期遅れまーす てへぺろ♪」っていう言語道断な連絡があった。
なんでも、工場スタッフの一人が体調不調で休んじゃったんだって。
そういう場合、
「仕事を滞りなく処理するためにノウハウを現場で共有し、常に他の者が交替できるようにするべき」
ってのは地球人の常識だし、私だってその意見に大賛成よ。
でもね.....
「体調がすぐれない者を気遣う事もせずに、仕事の遂行を優先させるなんて非人道的だ」
ってのが、一般的な宇宙人達の考え方なの......
一難去ってまた一難だわ(汗)
「はい......はい、申し訳ございません。それでは失礼いたします。」
電話じゃ向こうから見えるわけないけど、ぺこぺこと頭を下げる私。
「目的のために頭を下げる、それが平気なのが大人だ」なんて言葉を聞いたことがある......気がする。
ま、どうでもいいわそんなの。
プライド?
そんなもんでお腹はいっぱいにならないもんっ!!
「クソぉっ!!(怒) ふう......あー疲れた......」
受話器をちゃんと下ろしたことを確認してから、悪態とため息をつく。
(以前、うっかりやらかしたことがあるのよ......)
「ご苦労さん。傍で聞いてたかぎりやと、どうやら待ってもらえそうやね?」
「ええなんとか。でもあんなにケチョンケチョンになじらなくたっていいのに.....くすん、しくしく」
「うん、ぶりっ子はアンタには似合わへんよ」
「ほっといて下さい.......」
今度は気持ちを切り替えて、再びメールを送らなきゃ!
「......以上により顧客の了承が得られました。つきましては、下記の新しい納期までに商品を遅滞無く納入頂きたく、重ねてお願い申し上げます.....っと!!」
カチリとクリックしてメールを送る。
次の納期こそちゃんと守ってくれるといいけど......(不安)
「今度からは、納期遅れの際のペナルティを決めといた方がエエよ」
「それも考えたんですけど.....でも、そもそもそれで仕事を受けてくれなかったらどうするんです?」
「それでも後のケンカは先にしろって言うやん? どうせ最初にいろんなこと取り決めるんやから、その内の1件として項目にあげとくんよ。納期の件だけを話し合うより言いやすいから」
「なるほど、そうします」
「ま、そこまでやっても遅れる時は遅れるけどね」
「........」
ダメじゃん!!
「ま、宇宙人達との付き合い方は、アンタがこれから少しずつ自分なりのやり方を見付けるしかないんよ。僕と同じようにしても上手くいくとは限らへんしね」
「.....ですよね」
「ま、ボチボチやっていき」
「はぁい」
ゲンナリしつつ、次の仕事に取りかかった。
.............................................
いっつもこんな調子だけど、うちの部署の売り上げは結構スゴい。
なにせ今一番の花形産業だからね。
何度もクローンに乗りかえることによって、人類が無限の寿命を得た今では、「お薬」は衣食住よりも大切なアイテム。
怖い話だけど、もし「お薬」を服用しないままでいると、クローン本来の人格が発生しちゃって、最悪の場合、精神崩壊する危険すらある。
本当の意味で「死んじゃう」可能性があるわけよ。
だから幾つもの製薬会社が参入してるし、そこへ納める原料(うちの部署は一次加工をした商品だから、製薬会社からすれば原料ってことになるわ)は、ちゃんと単価が高い。
かててくわえて、うちのはただでさえ高付加価値の「MADE IN OTHER PLANETS」でもあるし。
ま、仕事自体はご覧の通り、ヒジョーに泥臭いものではあるんだけどね。
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