回文童話「黄色い太陽」
「此処は何処じゃ?!」
羽織袴の若殿が、呻いた。
地方の小藩の若殿だった。
「おそらく、砂漠かと」
お付きの小姓が答えた。
同じく羽織袴だが、若殿よりは軽装だ。
「砂漠とはなんじゃ?」
「このように草木がなく、岩や砂ばかりの場所を言います」
「どうしてこのような場所に居るのじゃ? 藩内の名所で紅葉狩りをいたしておったのに」
「おそらく空間しゃっくりに巻き込まれて、瞬間移動をしてしまったものと思われます」
「詳しいのう、そちは」
「巷の御伽草子が大好きで御座いまして、よく読んでおりまする」
「ああ、喉が渇く」
「大変に空気が乾燥しており、太陽が黄色うございます」
「おあっ?! 樹だ! 樹が見える?! 地面に青い場所も見える! 泉ではないのかっ?!?」
若殿は爪先立って叫んだ。
「蜃気楼と言うものにございます。不知火と同じで、そこには何もないのです」
とぼとぼと、迷い込んだ砂漠を歩き続ける若殿と小姓。
彼らはオアシスを目の前にして、通り過ぎてゆくのだった。
(喉渇く若殿)
のどかわくわかどの
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