回文童話「魔族チェラゴスモ」
魔族、漫遊のチェラゴスモは、方向オンチであった。
友人である、狂乱のグラーグガーンの屋敷に遊びにいくつもりが、人間界に迷い出てしまった。
(ヤバい。人間どもに見つかったら、嬲り殺しにされる!)
大慌てで、通行人にオリハルコン製の指輪を渡し、ハンチング帽と交換してもらった。
頭の三本ヅノを隠すためだ。
(人間界では異彩を放つ魔装束もヤバい)
カーテン屋で、ヒヒイロカネ製の腕輪と交換して、地味な紺色のカーテンを手に入れた。
そいつで体を覆い隠した。
口からにょっきり出ている二本の赤い牙は、唇をすぼめることによって隠した。
おりしも、人間界はハロウィンだった。
異形の仮装者が多く、紛れるには丁度よかった。
それでも、仮装で賑わう街の歩行者天国で、声をかけられる魔族チェラゴスモ。
「すげえ! あなた、肌が真っ黒やなあ。どうやったん?」
口をすぼめたまま、
「スミ。スミ」
と言ってみるチェラゴスモ。
「へえ。墨汁で?」
こくこくとうなずくチェラゴスモ。
「すごく背が高いけど、やっぱ、竹馬に乗ってんやろな?!」
こくこくとうなずくチェラゴスモ。
身長三メートル弱のチェラゴスモは、猫背になっても目立った。
掃き溜めに鶴。
紅一点ならぬ、黒一点であった。
怪しまれないように、深夜まで必死に、ハロウィンを楽しむチェラゴスモだった。
(なんと言うか浮いとんな)
なんというか、ういとんな……
今夜は満月。
そしてハロウィンの最中……。
ウチは田舎なので、仮装者も見ませんが。
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ではまた「のほほん」で、また明日。




