回文童話「たぶん不運」
入植希望のビートムさんは、長老会の一行に村を案内されていた。
「なんでこの花壇だけ、何も植えられていないんですか?」
と、ビートムさん。
それは、たわいもない疑問だった。
「うん、お前さんは新入りだから、知らないのも無理はないが」
「この村を襲った魔物が、転んだ拍子に」
「そこの花壇石に頭をぶつけて死んだんだよ」
長老たちは、発言を分担しながら説明した。
「うひゃあ。それで、何もない花壇なのに、柵で囲ってあるんですね」
「頭をぶつけて死んだのは、ドラゴンじゃなかったか?」
「先代の村長も、お祈りをしていて、転んで頭を打って死んじまったろう?」
「ドラゴンを退治しに来てくれた勇者様も、転んで頭を打って、いわゆる相打ちになったぞ」
「そこに勇者様の像があるから、お参りして行くと良いよ、新入りさん」
「うんうん、勇者像を撫でると、転んだ拍子に死ななくなると言われておるでな」
新入りのビートムさんは、あいそ笑いを浮かべながら、
(やっぱし入植はやめておこう)
と思った拍子に転んで、打ち所悪く死んだ。
あと数秒で勇者像の頭を撫でるという、寸前の出来事だった。
(死因だから花壇石)
しいんだから、かだんいし
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「魔人ビキラ」を連載中です。
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