回文童話「野沢くんの挑戦」
野沢くんは、少し不器用な子供だったので、お正月の凧上げも苦労していた。
お父さんが、
「そよ風でも上がる」
という西洋凧を見つけて、買って来てくれた。
信じられないくらい、一気に、グッ! と空に上がった。
お父さんもお母さんも、それを見て驚いた。
「すごい! すごい!」
その言葉しか、出なかった。
野沢くんも、もちろん喜んでいた。
そして六十年。
野沢くんは野沢爺となり、和凧を持って、お正月の公園にいた。
和凧は野沢爺に操られ、鮮やかに空に舞った。
「お父さん、お母さん。ほら、見て。和凧も上げられるようになったよ」
野沢爺は、ひとりごちた。
入院中のお父さんと、見舞いに来たお母さんは、病院の窓からその様子を見ていた。
「最初から和凧にしておけば良かったのかなあ」
と、少し反省気味のお父さん。
「洋凧も面白かったですよ」
と、笑顔で言うお母さん。
両親が他界しても、野沢爺は、お正月には凧上げをした。
(天国から、きっと見ている)
そう思ったからである。
その通りだった。
(野沢な技な)のざわな、わざな
(こだわり和凧)こだわりわだこ
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