回文童話「書き置き」
ハガロウ氏は、海岸線のマンションに引っ越して来た。
海のない県で生まれ育ったので、ベランダから海岸が見えるのが嬉しかった。
トンビが、マンションの上空で輪を描いている。
さっそく、マンション前の海浜公園を散歩するハガロウ氏。
防波堤を歩いていて、一枚の紙切れを拾った。
「あちらでまた一緒に」
と書いてあった。
「な、なにこれ?! 遺書?!」
ハガロウ氏は、思わず防波堤から身を乗り出し、海面を見た。
昼下がりの陽光を受けて、海面はきらきら輝いているばかりであった。
「あっ、あっちにもある」
防波堤の上にまた、紙切れを見つけるハガロウ氏。
走って行き拾ってみれば、今度は、
「もう待てません。先に行きます」
と書いてあった。
「こっちは女性らしい文字だ。心中かっ?!」
散歩中の人をつかまえて、
「ほ、ほら、これを見て下さい。大変なことにっ!」
と訴えるハガロウ氏。
「ああ、そういう季節ですからね」
散歩をしていた人は、立ち止まってそう答えた。
「き、季節? 心中の季節?!」
頓狂な声を上げるハガロウ氏。
「カモメはウミネコと違って、渡り鳥ですからね」
散歩おじさんは汗を拭きながら、なんでもないように言った。
「なに。寒くなれば、また帰ってきますよ」
(カモメのメモか)
かもめのめもか
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明日は、「魔人ビキラ」とかぶるので、投稿が出来ても時間がズレると思います。
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