回文童話「山歩き」
散歩好きの御老公は、今日は趣向を変え、山歩きと洒落こんだ。
崖の上に大きな動物を発見して、思わず唸る御老公。
「おお、なんと立派な牛じゃ!」
「御老公様、アレは牛では御座いません」
クビにされるのが怖いので、恐る恐る物申すお付きの者。
「牛ではない? あんな立派な二本の角があるのにか?」
しかし、ハタと思い当たり、ポンと手を打って言う御老公。
「分かったぞ。カモシカじゃな。カモシカは崖を登ると言うからな」
「カモシカでも御座いません」
御老公の無知を腹の中で苦笑しながら、うやうやしく応じるお付きの者。
「では、鹿か? 奈良公園に沢山おるヤツか? ふむ。近頃は、鹿の害も多いと聞くのう」
「はい、痛ましいことで御座いますが、鹿でもありません」
「では、なんだと申すか!」
エゾジカ、マゲジカ、ツシマジカなど、まだ言えたが、
「どうせ否定される」
と思い、言うのを止める御老公だった。
「あの四つ足の、立派な角のある獣! どう見てもシカに見えるあの動物はなんなのだっ?!」
( ………トナカイかなと……… )
………となかいかなと………
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回文妖術師・ビキラの、冒険ファンタジー、
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