回文童話「仕事熱心なキンジ君」
下校中の、男の子たちの会話だった。
「極楽って、差別があっちゃいけないだろ?」
少し意地悪そうな顔をしたキンジ君が言った。
「ああ、それはそうかなあ」
と、シロウくん。
「だから極楽じゃ、皆んな同じ顔をしていて、背格好も同じで、声も同じで、同じ服を着ているらしいぜ」
キンジ君が、手を振り回して力説する。
「うひゃあ。ウンコの長さも同じかよ?!」
と、ウンコ博士のハルト君。
「たぶん、一緒だ!」
キンジ君は力を込めて言った。
「食べ物も一緒かな?」
と、将来、フードファイターになりたいアキフミ君。
「ああ、弁当の交換なんか出来ねえぜ」
「いやな所だなあ、極楽って」
アキフミ君がつぶやいた。
「だろう?! 行きたくねーーよな、極楽なんて」
キンジ君が嬉しそうに言った。
その時、四つ角をこちらに曲がって、少しぼんやりした顔のキンジ君が現れた。
「おう、キンジ。どうしたい、いつものボンヤリした顔をして」
と、ハルト君。
「えっ?! じゃあ、こいつ誰だよ」
と、横にいるキンジ君を見るアキフミ君。
横にいるキンジ君は、
「いっけねーー。早かったなあ」
と言って、尻尾を出して走り去った。
尻尾の先は、矢印みたいな形をしていた。
「どうしたキンジ君。たった今まで、キミの偽物と一緒だったんだぜ」
少し得意そうに、シロウ君が告げた。
「ああ、信じてもらえないかも知れないけど、悪魔に捕まって、変な空間に閉じ込められてさ」
と、キンジ君。
「でも、観音様が助けてくれたんだよ」
「信じるよ、キンジ君」
級友たちは、異口同音にそう言った。
「ありがとう、皆んな。苦しい時は、神頼みしろよ。本当だぜ」
いつもボンヤリした顔のキンジ君が、すごくしっかりした声で、そう言った。
(極楽は苦楽後)
ごくらくは、くらくご
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