回文童話「ワビ助」
ワビ助は、ジャグリングの大道芸人だった。
エレキギターや津軽三味線とコラボしてみたが、拍手喝采は持っていかれた。
「うん。オイラ、パンチがないもんな」
ワビ助は分かっていた。
ならば、と、琵琶とコラボしてみたが、音でも雰囲気でも負けていた。
ワビ助消す琵琶。状態であった。
「うんうん。オイラ、パンチがないから」
ワビ助は自分の雰囲気を承知していた。
しかし、
「パンチが欲しい!」
という気持ちは、ふくらむ一方であった。
そんな所へ、下駄の行商人が通りかかった。
「どうだいそこの悩み多き青年。覗いてみないかい? 良い下駄があるよ!」
ヒトはだいたい、悩みをかかえている。
掴みはオッケなのだった。
果たして、大きな手さげ鞄から出された色とりどりの下駄を、しげしげと見るワビ助。
(これ、色が派手でいいなあ。芸人には、これくらいの派手さが必要かも)
と、つい、トロピカルオレンジの一本歯下駄を手に取るワビ助。
「おお。お客さん。お目が高い腰が低い背丈は中くらい」
なんとか買ってもらおうと、まくし立てる行商人。
そして「インパクト」を考えていたワビ助は、その一本歯下駄を買った。
(この派手な下駄でジャグリングをすれば、地味なオイラでも注目されるかも)
幸か不幸か、それは呪われた一本歯下駄であった。
下駄に操られ、タップダンスを、ベリーダンスを、コザックダンスを披露するワビ助。
ボーリングのピンのような棒を、落とさぬよう投げ続けるワビ助の懸命な姿に、人々はそれなりに感動するのだった。
(多芸下駄)
たげいげた
同サイトで連載中の「魔人ビキラ」の、
第二十八話「農婦の、おタネさん(後)」は、
本日、21日(土)の12時台に投稿予定です。
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