回文童話「ワギクマ老の日常」
日課の散歩をしていて、
(おお。彼は先週、公園の階段を上がる時に、手を引いてくれた若者では?!)
親切を受けたデニムの若者を発見し、礼を言うべく横断歩道を渡ろうとするくたびれたジャケットのワギクマ老人。
しかし、こちら側の歩道に、白いワンピース姿のおばさんを見つけた。
(なんと。あんな所に、先月、買い物帰りに落とした大根を拾って下さったご婦人が!)
横断歩道を渡るのをやめ、かの恩ある婦人に近づこうとして、走り去る車の中に、
(おお。ワシを引ったくりから守ってくれた犬ちゃんが)
忠犬を見つける。
果たして、車を追って歩道を駆け出すワギクマ老。
(ああ、駄目だ追いつけない。角を曲がって行ってしまった)
肩を落とすワギクマ老人は、しかしまた新たな発見をする。
(おおっ、信号待ちをしているあの女子高生は、十年前の木曜日の朝、見ず知らずのワシに『おはようございます』と挨拶してくれた女の子では?!)
走った後とて、肩を大きく上下させ荒い息をつきながら、ワギクマ老人はニコニコ顔で女子高生に迫って行くのだった。
ワギクマ老人は、一応、義理堅い人らしいことで、有名なのだ。
(移り気な義理通)
うつりぎな、ぎりつう
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