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回文童話「必死のパッチ」
マハルさんは興奮していた。
推しの球団が快進撃を続け、ついに優勝が目の前となったのだ。
「お父さんもう、ダサい。そのパッチやめてよ」
娘が言った。
パッチとは、丈の長いズボン下の名称だ。
かわいい娘の言葉だが、このダサいパッチを履いてから、球団は一度も負けていない。
脱ぐわけにはいかなかった。
「そのパッチ、匂ってますよ、お父さん。洗濯機でほかの洗濯物に匂いが移ったらどうするんですか?」
妻もおかんむりだ。
「優勝したら、タイガー○が優勝したら潔く脱ぐから」
マハルさんは家族に懇願した。
「もう少し、もう少しだけ我慢してくれ。久しぶりなんだよ。本当にもう、優勝は子供の時以来なんだよう」
(勝ちっぱなしなパッチか)
かちっぱなしなぱっちか
この物語はフィクションです。
実在の球団、人物とは何の関係もありません。