58/111
回文童話「椿の生け垣」
病気などのお見舞いに、椿の花を持って行くのは、縁起が悪いとされる。
花部分が丸ごとポトリと落ちるので、
「首が落ちるようだ」と言う訳だ。
しかし、家で愛でる分には、何も問題はない。
椿の垣根など、よく見る話である。
「新種の椿なんだってよ。咲くのが楽しみだなあ」
新種椿の生け垣を作って、花田さんは御満悦であった。
その新種の椿が咲く頃、花田さんは庭に、友人の菊川さんと桜田さんを呼んだ。
新種の椿は、三人のギャラリーを確かめると、大きく花を咲かせ、小話を始めた。
「はいはい皆さん。とくとごろうじろ!」
「ごろう、でーーす!」
「じろう、でーーす!」
「ごろうじろで御座いましたあ」
「御後がよろしいようで!」
言い終わると、椿の花が三つ、立て続けにぼとぼとと落ちた。
「な、なるほど」
と、膝を打つ桜田さん。
「見事な、あの、散り際でございましたなあ」
と、菊川さん。
(あんがい、つまんない)
とは言いにくい、桜田さんと菊川さんであった。
(奇抜な椿)
きばつなつばき
同サイトにて、
回文妖術師・ビキラの冒険ファンタジー、
「魔人ビキラ」を連載中です。
よかったら、覗いてみて下さい。




