回文童話「仲間の増やし方」
「大きなキノコが生えている」
と聞いたイッペイくんとダイスケくんは、裏山に登った。
「ええっと、この辺だと聞いたぞなもし」
と、イッペイくん。
「ぼくも、この辺りだと聞いとったぞなもし」
と、ダイスケくん。
言われた「ドングリ地帯」を探るが、見つかるキノコは、サクラシメジやシャカシメジと言った、特段に珍しくもないキノコばかりだ。
「おかしいぞな」
と、イッペイくん。
「だまされたんかのう?」
「いんや。コヘイタくんは、ぼくらをだまくらかすような人ではないぞなもし」
「それにしても、大きなキノコなぞ、ないぞなもし」
「もっと良く探すぞな」
「『ドングリ地帯』の目印という大木は、この樹ぞな」
と、大木を叩くダイスケくん。
「この辺りで間違いないぞな」
と、イッペイくん。
「もっとよく探すぞな」
イッペイくんとダイスケくんは、目印と言われたドングリ地帯の奇妙な大木の辺りを、いつまでも探し続けた。
二人の体には、木漏れ日と胞子が、さらさらと降りそそいでいた。
(謎キノコはこの樹ぞな)
なぞきのこは、このきぞな
古い特撮ファンの中には、東宝の「マタンゴ」を連想した方がいるかも知れません。
大きな声では言えませんが、「マタンゴ」は、元ネタです。




