回文童話「異常気象の日」
大阪で開かれる競技大会へ、電車で向かう集団があった。
試合は明日だ。
気分は、いやが上にも高まっていた。
電車が兵庫県に入った途端、サタル君が叫んだ。
「うわあ、空が輝いている! 凄い!」
地元では見たことのない空の輝きに、サタル君は驚いた。
「近畿地方が輝いているんだって」
マルカさんが言った。
「天気予報で言ってたわ」
「近畿地方に引っ越そうかなあ」
と、ルカカ君。
「こういう空なら、のびのび暮らせそうだ」
「いや、空の輝きは今日だけらしいぞ」
コーチのバンバさんが言った。
「そういう天気なんですか?」と、サタル君。
「そういう天気らしい」と、コーチ。
「一時的な見た目に騙されるな、って教訓かなあ」
サタル君がつぶやいた。
「どこにでも輝きがある、って話じゃないかなあ」
と、ルカカ君。
「神様はキンキラがお好きです。って言ってる人、知ってるよ」
と言ったのは、コンダくんだ。
「それ、キンキラじゃなくて、オカネでしょ。神様じゃなくて、人間の好みでしょ?」
と、マルカさん。
「いけない。いっぺんに俗っぽくなっちゃったわ」
電車の中に、なごやかな笑いが生まれた。
近畿の空は、落陽の後も輝き続けた。
「今日だけ」の、異常気象なのだった。
(キンキラ近畿)
きんきらきんき
同サイトにて、
回文妖術師・ビキラの冒険ファンタジー、
「魔人ビキラ」を、一話読み切り形式で連載中です。
よかったら、覗いてみて下さい。




