回文童話「姉妹」
「誰だっ、妹をいじめたヤツは?! 泣いて帰ってきたぞ!」
姉の岩子さんが、公園の砂場にやって来た。
「うわあ、お姉さんだ!」
「逃げろ!」
「食べられちゃうぞ!」
逃げ出す子供たち。
しかし、逃げ出さない子供がひとり居た。
「ごめんなさい、ごめんなさい。いじめたんじゃないんです!」
三郎君は正直にゲロした。
「岩代さんが好きで、つい、からかったんです」
「そうだったのかっ!」
岩子さんにも覚えがあった。
好きな男子の気を引こうとして、泣かしてしまった覚えが。
「しかし気をつけろ! 岩代は体が弱いんだ!」
「はいっ、ごめんなさい!」
三郎君は直立不動で叫んだ。
「正直でよろしい!」
それだけ言うと、岩子さんは回れ右をして、足音をドスドス響かせながら、帰って行った。
(ああ、怖かった。でも、良いお姉さんだなあ)
(惚れちゃうなあ)
早くも姉の岩子さんに、心変わりする三郎君であった。
(か弱いの岩代か) かよわいの、いわよか?
(怖いぞ岩子) こわいぞ、いわこ!
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