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回文童話「スピード記録」
「カルナさん、空港に着いた時にはもう、離婚を決意してたんだって」
「うひゃあ、怖いねえ。また羽田離婚かよ」
「何が楽しいの? 新婚旅行から帰って来た途端に離婚て」
「だって仕方ないでしょう。新婚旅行中に、相容れない性格に気がついたのよ」
「結婚生活なんて、妥協の積み重ねなのにねえ」
「新婚さんに、その達観は無理だって」
「まあ、アレだな。いかんともし難い価値観の相違、っちゅうヤツだなあ」
課長が腕を組み、したり顔で言った。
職場は同僚の離婚話で持ちきりだ。
ベイタさんも、素知らぬ顔をしながら、聞き耳を立てていた。
バツイチのベイタさんには、心ならずも心踊る他人の不幸だったのだ。
(ああ、オレって、なんて人でなしな性格なんだろう)
バツイチ・ベイタさんは、反省しつつ、
(オレは成田離婚だったなあ。懲りないよな、スピード離婚。人間は)
と、懐かしくも痛々しい思い出に浸るのだった。
(成田離婚懲りたりな)
なりたりこん、こりたりな
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