回文童話「残雨のち晴れ」
部活からの帰り道、奥田くんのお父さんを見つけたハルコさんは、急いで近づき、声をかけた。
「奥田くんのお父さん、こんにちは!」
勢いよく頭を下げるハルコさん。
「おや、ハルコさんでしたっけね」
振り返って頭を下げるお父さん。
「一度、ウチに遊びに来てくれたことがありましたね」
「はい、そのハルコです。あのう、お聞きしたいことがあるんですが」
「はい。なんでしょう?」
「あのう、あのう、奥田くんに手編みのベストをプレゼントしたんですけど、学校では一度も見たことがないんです」
「ああ、ディスティニーピンクのベストですね? それならウチで着ていますよ、シス太は」
「あっ、良かった! 家で着てくれているんですね!」
「はいはい。お気に入りのようですよ」
(学校で着るのが恥ずかしいから、家で着てるんだ、奥田くん)
ハルコさんは納得して、笑顔で走り去った。
一方、奥田くんのお父さんは、
「いつ着てるか言い忘れたが、まあいいか」
と、つぶやいていた。
(寝る時に着とるね)
ねるときにきとるね
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