回文童話「パン食い競争」
ここは某校の運動会だ。
午前の部の最後の競技、
「パン食い競争・超人の部」に出場する奥田くん。
奥田くんはこの日のために、昨夜からご飯を食べていなかった。
しかし、一週間も何も食べずに競技に臨む、食べない鍋田、という強敵もいる。
「お互い、頑張ろうぜ、奥田くん」
スカスカのお腹を押さえて、鍋田くんが奥田くんに声をかけた。
鍋田くんも、奥田くんが強敵だと思っているのだ。
スタートの合図と同時に駆け出す参加選手たち。
しかし足が速いからと言って、パンに早く食いつけるとは限らない。
パンの位置は、三メートルの高さにあったからだ。
「ゔがーーー!!」
奥田くんは空腹をエネルギーに換えてジャンプした。
そしてパンに食いつき、一番でゴールする奥田くん。
「すごい! 奥田くん『このひと変人の部』に続いて、『超人バッタの部』まで優勝した!」
「奥田くん、おめでとう!」
「奥田くん、お昼はわたしのお弁当も食べて!」
次々と祝福してくれる級友たち。
「皆んなの応援のおがげだよゔ! ゔれじい。ゔれじいよゔ!!」
奥田くんは、男泣きに泣いていた。
(濁音奥田)
だくおんおくだ
「パン食い競争」は今、中止になりつつあるそうですね。
作者は、競技として当たり前にあったので、何も考えずにパンに食らいついていた世代です。




