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回文童話「侵略者たち」
宇宙からの侵略者は、時々やって来る。
その昔、ありふれた風邪の菌に弱い火星人が襲って来たことがあった。
海水の成分に弱い宇宙生物もいた。
この時は、人類のほとんどの視覚が奪われた状態だったので、危なかった。
そして今度は、酸性に弱い侵略者だった。
侵略者は撃退され、酸性物質たちは、大威張りだ。
「ぐるぐる巻きにして、苦しめてやったぜ」
と、酸性紙たち。
「覆い被さって、昇天させてあげたわ」
と、酸性植物たち。
「片っ端から沈めたのさ」
と、酸性泉たち。
「弱いったらないの、弱いったら」
と、酸性雨。
もちろん我らが岩石たちも。
「今、帰りました」
「頭突きも体当たりも効果がないので、めっちゃ焦りました」
「そうそう、舐めさせたら良かったのよね」
地球の未来は、これからも安泰と思われた。
(酸性岩凱旋さ)
さんせいがん、がいせんさ!
もしかしなくても、
H・G・ウェルズ著「宇宙戦争」
ジョン・ウィンダム著「トリフィド時代」
へのリスペクトが含まれています。




