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回文童話「獏のバッ君」
獏のバッ君は、大変な「上がり性」だった。
人がレム睡眠中に見る夢を喰う幻獣。
ではなくて、動物園でも見ることができる草食性の、バクである。
バッ君は、そんな自分のサガを直すために、町内の、のど自慢大会に出場した。
「バッ君、頑張って!」
ガールフレンドの、パッ子さんが声援を送る。
バッ君は「上がり性」と戦いながら、カチコチに鯱張って、舞台中央、マイクの前に進み出て行く。
(負けるもんか!)
(見事、歌い切って、パッ子さんにプロポーズするんだ!)
バッ君の志しは高かった。
しかし、伴奏の流れる中いつまで経っても、バッ君は歌い出さなかった。
緊張のあまり、仮死状態になっていたからである。
そんなバッ君に、パッ子さんはプロポーズした。
(わたしが支えないと、この人は駄目になる)
パッ子さんはそう思ったのである。
余談ながら、パッ子さんのようなサガの女性に、世の男性陣は大いに助けられていると思う。
(四角張るバク仮死)
しかくばるばく、かし
(実は作者もそういう男のひとりだ。内緒だが)




