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回文童話「案山子のモヘ子」
案山子のモヘ子は、田んぼで実りゆく稲を守っていた。
稲の天敵は、多い。
稲穂から汁を吸うカメムシ類。
葉を食べるゾウムシ類、バッタ類。
茎も食べる蛾の幼虫ども。
スズメは、虫を食べるが、実った米も食べる。
穀物が大好きなのだ。
モヘ子は、これら天敵を追い払っているうちに、一羽のスズメに恋をしてしまった。
禁断の恋であった。
今日もそわそわしながら、モヘ子はスズメのチュン太が来るのを待っている。
「なんて告白しよう」
「これこれチュン太さん。米を食べてはいけません」
「それより、あたしを嫁にしませんか?」
「直情的すぎるかしら。これじゃ嫌われそう」
その日のチュン太は、いつもより田んぼに来るのが遅かった。
モヘ子の気持ちは妄想と共に高まっていた。
モヘ子はチュン太を見るなり、叫びながら行動に出た。
「チュン太さん好きだああああ!!」
(伸し掛かる案山子の)
のしかかるかかしの




