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回文童話「リア王・外伝」
「リア王」は、シェイクスピア四大悲劇のひとつである。
その初稿には、こんな展開があったそうだ。
『リア王が、宮廷おかかえの道化師に、黄金で出来た作り物の魚を噛むように勧められる。
リア王「なんのまじないだ?」
苦笑するリア王に、道化はうやうやしく頭を垂れて言う。
道化師「ご一族が末長く仲睦まじくあられますように。黄金魚のお告げに御座います」
リア王は顔をしかめながらも、お気に入りの道化の言葉に従い、黄金魚を噛む』
しかし、書いた後、その場面をシェイクスピアは削除してしまった。
「不合理」だと思ったからである。
そして無事に、「リア王」は、長女と次女に国を追放される悲劇の筋書きとなったのだった。
(魚ありし昔噛むしリア王)
うおありしむかし。かむし、りあおう
この物語はフィクションです。
高名な悲劇の王、偉大な劇作家とは、何の関係もありません。




