回文童話「肝試し」
合宿の夜、定番の肝試しが行われることになった。
墓場を通り過ぎた先に、一本杉がある。
昼間のうちに、根元にスケッチブックを置いたので、そこに名前を書いて、帰って来れば良いのだ。
一番バッターはキヨコさん。
「おキヨ、頑張って!」
部活仲間に励まされ、出発するキヨコさん。
キヨコことおキヨさんは、少しドライなところがあった。
「こんなことして、お寺さんに叱られたらどうするのよ」
おキヨさんはブツブツ言いながら、ズカズカと墓場を横切って行った。
そこに出現する本物の妖怪!
「うわっ、顔が。顔がっ!」
さしものおキヨさんも驚いた。
「顔がハゲてるっ!!」
妖怪は、ノッペラボウだった。
「頭のみならず、顔までハゲてるなんて」
おキヨさんは妖怪に同情した。
「まかせといて。わたしが描いてあげる。大丈夫、わたし美術部だから」
おキヨさんはノッペラボウに顔を描き入れ、一本杉まで無事に辿り着いて帰って来た。
だが、二人目のハナコさんも、三人目のサダコさんも、四人目のオイワさんも、
「もの凄い形相のオバケが出た!」
そうで、怖くて途中で逃げ帰って来た。
おキヨさんの画力のお陰で、その年は、とても盛り上がった肝試しになったのだった。
(良きお清)
よき、おきよ