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回文童話「決闘」
ある地方の不良高校を統一するために、幕菜高校の番長、武田夏之進は決闘を繰り返していた。
今日も帽訓高校の番長と決闘することになっていた。
「……遅い……」
風にたなびく草原に立って、夏之進がつぶやく。
「アレですかね、大昔の有名な、巌流島の決闘の、ムサシの焦らし作戦」
と、右腕の伴介。
「あっ、ようやく来ましたぜ、番長!」
左腕の供吉が指をさす先に、帽訓高校の一団が姿を見せた。
先頭の小柄な学生服姿の人物を見て、夏之進が言う。
「女みてえな華奢な体格だな」
「当たり前だ。あたしは女だ!」
「おう。スケ番だったのか。名は?!」
「岩清水夏子!」
「オレは武田夏之進。夏つながりだな」
「うるさいっ。てめえ、趣味は?!」
「将棋!」
「ふん、同じだ。好きな食べ物は?!」
「粉モノ全般。特にタコ焼きが好きだ」
「ふふん、同じだ。好きな色は?!」
「スカイブルー!」
青空を見上げて、夏之進は言った。
「けっ。青春しやがって。あたしも夏の青空が大好きだ!」
決闘は行われなかった。
その出会いが、夏之進と夏子の初デートとなったのは、言うまでもない。
(繋がりが夏)
つながりが、なつ




