回文童話「ゾンビ現象・二題」
その1「ゾンパニ博士」
街にゾンビが出現した。
某国の侵略兵器か?!
新人類の誕生か?!
対策を講じるべく、政府は早々に、
「ゾンビ対策本部」を立ち上げた。
「ゾンビに噛まれるとゾンビ化します」
と、その道の権威、ゾンパニ博士が講釈を垂れる。
「そんなことは分かっておる!」と、某大臣。
「わたしのように」と、ゾンパニ博士は続けた。
ゾンビ化し、シェルターに集まった大臣たちを襲い始めるビック・ゾンパニ!
「わあ!」
「助けてくれ!」
「死ぬ死ぬ死ぬ!」
昭和生まれの大臣たちの慌て様は、さながら無声映画時代のコメディのように大袈裟だった。
手足をバタつかせ、変顔を作り、とても古典的だったのである。
(今古典的てんてこ舞い) いま、こてんてきてんてこまい
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その2「シバザクラ大臣」
ゾンパニ博士に噛まれた大臣たちはゾンビ化し、次々と仲間を増やしてゆく。
ゾンビ化した大臣の中には、仲間のゾンビを噛む慌て者もいた。
だが見よ、その慌て者のゾンビに噛まれたゾンビは、人間に戻ったではないか!
「逆転現象だ」
「新型ゾンビの誕生だ!」
「シバザクラ法務大臣、そのまま仲間を噛み続けろ!」
そそっかし屋で有名だったシバザクラ大臣は、ゾンビであるにも関わらず、そそっかしくも人間の命令を聞いた。
(今こそワタシの存在意義を見せる時!)
と、張り切ってゾンビを噛み始める。
そこでまた、新型ゾンビが誕生した。
仲間のゾンビを食べ始めたのだ。
「うわ、こいつ、仲間を食べるぞ!」
「シバザクラ大臣、なんとかしろ!」
シバザクラ大臣はすでに、新々型ゾンビに食べられつつあった。
(遺体食う喰いたい) いたいくう? くいたい!




