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回文童話「フユタケさん」
フユタケさんは、自称、食の哲人だった。
色々とこだわりのある癖の強い人だったが、特にメンマには執着していた。
メンマの原材料は、麻筍というタケノコなのだが、亜熱帯性気候に生える植物だ。
日本も亜熱帯化して、それがフユタケさんの願いをかなえることとなった。
マチクの栽培に、フユタケさんは日本本土で成功したのである。
「日本原産のタケノコとは、質感が違うのだよ」
と、フユタケさんは語った。
マチクを収穫し、蒸し、塩漬けにして発酵させる。
その過程を、すべて独りで行うフユタケさん。
もはやメンママニアと言えた。
自家製メンマを、ほかほかご飯にのせて食べ、
(してやったり!)
の笑顔を浮かべるフユタケさん。
他人が見たら、その顔は鬼神に見えたかも知れない。
一方、食されるメンマたちも快心の笑みを浮かべていた。
「苦しゅうない。存分に食されよ!」
朝の食卓で、火花を散らす、食べるフユタケさんと、食べられるメンマたちの笑顔。
暑苦しくて、家族は誰も近づけなかった。
(満面メンマ)
まんめんめんま




