回文童話「敗戦濃厚」
敗戦濃厚な某国での秘密会議。
陸、海、空の将軍たちが集合していた。
「ジュデルダ総攻撃作戦が、失敗した原因が分かりました」
情報将校のその言葉に、身を乗り出す将軍たち。
「我が軍の暗号が、敵に解読されていたからです」
「な、なんということだ」
陸軍のアルファ将軍が青い顔をしてつぶやいた。
「作戦で殉職した兵士たちの家族に、なんと言えばよいのだ」
海軍のベータ将軍も、死人のような顔色になって言った。
「暗号を作成したのは、どこのどいつだ?!」
空軍のガンマ将軍は、強い怒りを見せた。
「カプシロン大将軍の息子さんたちです」
「ぐっ。し、しかし罰せねばなるまいが」
と、アルファ将軍。
「軍を今一度、引き締めるためにも厳罰を!」
と、ガンマ将軍。
「では、暗号を発信していた電信機に責任を取らせましょう」
「おう。誰も傷つかぬな。それが良かろう」
ベータ将軍が、ホッとした顔になって言った。
(電信機を謹慎で)
でんしんきをきんしんで
大将軍の息子たちは罰せられなかったので、その後も暗号は敵に解読され続けたという話である。
物語には暗喩や直喩が必要だ、という人が少なからずいます。
この物語は、戦争の虚しさと残虐性を訴えています。




