回文童話「店の名は、テリテリ」
ここは某街の、評判の良い照り焼き店「テリテリ」である。
「ほう、この照り焼き店を、おひとりで切り盛りしておられるのですか?」
「繁盛しているし、それは大変でしょう」
「街角うまい店」という情報誌のスタッフが、照り焼き店に取材に来ていた。
「まあ、ウチには秘伝の合理的料理術があるからね」
と、まんざらでもない様子で、店主が答えている。
「肉汁は、じゅわわ! っと。皮は、ぱりぱり! っと。最高だよ」
お客が褒め称えている。
「少しは待たされるが、飽きないよ」
それぞれのテーブルの上では、寸劇が行なわれていた。
「さしたる用もなかりせば、これにて御免!」
石川五右衛門に扮した菜箸が、テーブルを横切ってゆく。
客たちは、手を打って喝采を送っている。
沢山の長い箸が入れ替わり立ち替わり、見事な芝居を見せていたのだ。
(菜箸の芝居さ)さいばしの、しばいさ!
一方、厨房では、醤油ベースの甘味のあるタレを手際良く塗りながら、焼かれて照り焼きが出来てゆく。
もちろん、照り焼き本人がタレを塗り、焼いて、店主の手間を省いているのである。
(照り焼きやり手)てりやき、やりて!
回文童話「のほほん」残念無念の最終日。
次は、たぶん夕方の5時台に最後の111話を投稿予定。
ほなまた、今日の夕方に!




