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回文童話「果物アイドル」
果物のアイドルスターを誕生させようと目論んだ、ナンボなナンバ芸能事務所は、さっそくオーディションを開いた。
「一番、りんご。りんごタレントに、王林さんや、りんごちゃんがいます」
関係は、なにもなかった。
「二番、柿。世の中の、渋さ甘さも噛み分けます」
「三番、梅。お酒に化けられましゅ」
「四番、ミカン。よく、未完の大器と言われます」
「五番、イチゴ。自分の白書が書けます」
「六番、さくらんぼ。だいたい双子です」
「どうもピンと来るものがありませんなあ」
と、審査員のひとりが言った。
「現代の果物はドライですからなあ」
と、もうひとりの審査員。
ドライフルーツに掛けた洒落だったのだが、誰にも気づいてもらえなかった。
「ええ、次の方」
「七番、バナナ。とっても栄養があります」
残念ながら、中身というか、栄養価とアイドルはなんの関係もない話だった。
(七番甘蕉)
ななばんばなな
この物語はフィクションです。
実在する芸能事務所、実在するアイドル、実在するアイドル概念とは、なんの関係もありません。