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回文童話「霊媒師」
ロシアの無名作家は考えた。
「もっと世間の人に、私の作品を読んでもらう手立てはないか」と。
そこで、霊媒師に頼んでトルストイを呼び出してもらった。
霊媒師とは、
死者の魂を現世に降ろして、自分に憑依させ、その死者の考えを伝える。
そういう伝言者のことだ。
トルストイの霊媒師は言った。
「簡単じゃ。温泉の湯面に、作品が浮かぶようにすれば良い。温泉客は、温泉に浸かっておらねばならぬから、自然と湯面に浮かび来るロシア文字、つまり作品を読むであろう」
「なるほど」
と無名作家は思い、
ではどうすれば湯面にロシア文字、つまり自分の作品が浮かぶようになるのか?
過去の有名人たちを呼び出してもらい、教えを乞うた。
ダ・ヴィンチ。アインシュタイン。エジソン。平賀源内。チンギス・カン。クレオパトラ。小松左京。ノーベル。
みな、答えは一緒だった。
『下らぬことを考えていないで、創作に励め!』
(露文風呂)ろぶんぶろ
(意図するトルストイ)いとするとるすとい
短く、楽しく、を考えて書いています。
特に意味はありません。




