第98話:練兵場穴掘り大会
カミサマパワーをなくす前に捜索したテルルの話によると、練兵場に心臓が入った箱が埋められているらしい。
ので。
「ったく、なんで僕がこんな雑務を」
「お前北欧神話の神様の中では比較的暇だろ?だったら手伝え」
「暇だと?僕には経理とシュナウトとの交渉という立派な仕事があってだね、とても忙しいんだよ」
「つまり暇ってことだな。口ばっかり動かしてないでさっさと掘れ」
ざくざくとスコップで穴を掘りながらヘイムダルは悪態を吐く。
「……そうだ。土属性の魔法を使ったり、地面を爆発させた方が早いんじゃないか?この辺りに埋まっているってことが分かっているんだったら、もうちょっと豪快にやった方が早く終わるだろう?」
「エリカが言っていたぜ?「こういうのはみんなで協力した方が楽しい」って。そういうわけにもいかないんだとよ」
「ちぇっ。これだから異世界の住民は考えていることが読めないね」
「あんたも一応異世界の、しかもエリカがいた世界の神じゃなかったっけ?」
勇者と神が一緒にスコップで穴を掘っている光景は何処かシュールだ。
「って言うか、本当にこの辺りであっているんだろうな?」
「隅の方ではなかったはずなので間違いないと思います。わたしの代わりに頑張って掘ってください」
「「お前も/君も掘るんだよ!!」」
この白い神は鼻に付く言動が目立つため嫌いだったが、この場に限っては意気投合してしまった。
「何でわたしが掘らなければいけないんですか?女神ですよ?わたしは天界で人間を管理していた女神ですよ?」
「じゃあ僕は何?!僕だってかつて多くの人間に信仰されていた神様なんだけど?!その神様が泥に塗れながら穴を掘ってるんだけど?!」
「ああはなりたくないですね」
「落ち着けヘイムダル!!お前がカミサマパワーで本気で殴ったらテルルが死んでしまうぞっ!!」
勇者と言えども神には勝てない。ずるずると引き摺られそうになりながら止めようとすると、
「そこ!サボるな!!」
スコップを剣のように突き立てたラウンが叫ぶ。
「ここで確実に仕留めないとカロルはまた復活する!!草の根分けてでも探すのだ!!」
「それに、今回カロルが復活してしまったのは、私たちがその小箱を探し出せなかったのにも原因があるのですよ?」
「飽きたし腹減ったなー。今晩何食おう?」
「見つけるまでご飯はおあずけだ」
「何っ?!それは死活問題だぜ!!うおおぉおお!!龍人族の掘削力舐めるなよっ!!」
俄然やる気が出てきたのか服が汚れるのも構うことなく地面に這って犬のように腕で掘りまくるトルーニ。そのせいで突き出された尻から下着が丸見えなのだが、そんなものに構っている場合ではないらしい。
「やっぱり魔法を使った方が早いんじゃないですか絵理華さん?こんなに大人数に手動で掘らせるのって効率悪いかと」
「違うよセレン!効率が悪くてもみんなでこうやって汗水流しながら作業した方がさ、絆が深まるし青春の一ページって感じするじゃん?分かんないかなそういうの!!」
「変なスイッチ入っちゃってません?!神様って楽することしか考えていない不届き者ばかりなので全く分からないです!!」
「ふふ。でもエリカの企みは上手くいっているみたいだよ?」
タイガが優しく微笑んだのでそちらを見ると、
「ドワーフは鉱山仕事を得意とした種族!!この勝負、負けないでありますよ!!」
「穴掘り楽しいね!!あはは!!」
「駄兎には絶対に負けないわよ!!【アブゾープション】はまだ働いているし、これは勝ったも同然ねっ!!」
いつの間にか誰が一番深く穴を掘れるかの勝負になっていた三人がヒートアップしていく。目的がリッチの心臓を探すことを完全に忘れているようだ。
「うふふふふふふふふふ!!この力を使えば何処までも掘り進めることができるわっ!!ああっ!!」
「どうしたのメイア?!!」
ガイン、という硬質な音とメイアの小さな悲鳴。これはスコップに小箱が当たったか?と思って穴を覗いてみたが、
「スコップが折れてしまいましたわ。全く、脆いスコップですこと!」
真っ二つに折れたスコップを握って憤慨しているところだった。
「お城の倉庫にあった陸に手入れもされていないようなスコップでしたからねえ。無理もないですね」
『くくくくくく』
額に聖剣が突き刺さった痛々しい骸が声を発する。
『ワタシの心臓を探し出せるかな?』
「結構治ってきたな。おーい誰か。リライト入れといてくれ」
「おうよ」
『ぐおおっ!!』
『リライト入れておく』とは、カロルが完全復活しないように聖剣リライトでダメージを加えておくことだ。抜き身になった聖剣でぎりぎりと穴の中に刃を捻じ込むと、叫び声を挙げながらボロボロと骨の一部が崩れる。
「てめえには散々苦しんでもらうからな!自分の心臓が破壊されるのをそこで悶えながら観てなっ!!」
『おのれっ!おのれえっ!!』
こっそり復活するのは性に合わないのか何なのかはよく分からないが、ご丁寧にも一々話し掛けながら復活しようとするので、気づいた人が刃物を入れては穴掘り作業へと戻る。織田信長が自身を狙撃しようとした杉谷善重坊に対して行った、首より上を出して生き埋めにし、通行人に切れ味の悪い鋸で少しずつ引かせる処刑方法・鋸挽きの刑のようだった。
「これだけの人数で探しているのに、意外と見つからないものだね……。おっ!」
近くで作業をしていたタイガのスコップからカンッ、という小気味好い音が鳴る。
「どう?何かあった?!」
「もしかしてこれかな?」
声を聞きつけてレオルスも来たため確認させる。
「……この趣味の悪い装飾。間違いないだろうな」
「見つかったなら良かった。早速――」
「待て。何かしらの魔法や罠が仕掛けられていてもおかしくはない。念のため『フライ』で触れないように持ち上げろ」
指示された通りに『フライ』で穴の中から浮かび上がらせて地上へと置く。
「で、触るのが危険っていうならどうやって破壊すればいいの?魔法で壊すにしても妨害されるかもしれないんでしょ?」
「そういう時こそリライトだよ。おいトルーニ。リライトを持ってきてくれ」
「??リライトに罠を破壊できる機能があるとか?」
「邪悪なモノであれば何でもぶった斬れる」
「つまり力業ってことだね……」
「あれこれ変に考えるよりも、この方が手っ取り早いからな」
逆手に持って剣の刃物を下に向けると、箱の上で振り翳す。
「中身確認しとかなくていいんですか?」
「人間の身体に付いているわけでもないのに箱の中でドックンドックン動く心臓だぜ?見たいか?」
「あ、結構ですー。そのままブスっとやっちゃってください」
怖いもの見たさでちょっと見てみたいようなそうでもないような。
そんな気持ちが半々のまま土の上に置かれた箱と剣を交互に見つめる。
「……いくぜ?」
「行っちゃってください!!」
穴掘りに夢中な一部の連中を除いて全員が見守る中、小動物でも殺すかのようにレオルスが聖剣で一突き。
直後、
『がああぁああああぁぁぁあああっっっっっっっっ!!!!!』
悲鳴を響かせると地面に雑に置かれた髑髏は砂像のようにボロボロと形を失い、一陣の風に攫われて運ばれた。
「これで終わったんだよね……?」
「そういう時にこそ『ディスティンギッシュ=シャム』だよ」
光属性の魔法が本業である勇者が手早く唱える。
「…………ふむ。あの箱が消えたのもカロルが死んだのも、そう見えるように仕掛けられた幻覚じゃあないみたいだな」
「じゃあ本当にカロルを斃せたってこと?」
「ああ。リッチを斃せるなんてなかなかない機会だから、もっと胸を張ってもいいぜ?」
こうして魔王軍の残党たちは全滅し、絵理華たちを追け狙う敵は完全に消えた。
しかしここで安心してはならない。真の目的は宿敵を排除することなのではなく、動物園を開園し、繁盛させることなのだから。
「うおっ!何これ?!!水が出てきたぞっ?!!もしかして水脈を掘り当てちゃったあ!!?ルナティちゃん溺れちゃうんですけどおぉおっ?!!」
「ざまあないわね駄兎!そのままRIPなさい!!……あら?私の足元にも水が?」
「水没するでありますう!!全員退避!撤退せよお!!そして私のことも助けて欲しいでありますう!!」
……今日はもう少し楽しんでもいいかな。
和やかな喧噪に向かって走りながら絵理華はそう思った。
今日の藤井は一日友人とお出かけ中なので、リアルタイムでのいいねとブックマークの報告ができません!あしからず!!
……というか、普段も投稿をうっかり忘れないように、時間指定の自動投稿にしているんですけどね。
今回が今年最後の投稿ですね!
今年もコンテスト全落ちのへっぽこ作家のまま終わりました!!三年間無冠の底辺クソザコ作家とはわたしのことだあ!!
2019年7月7日。
シフト勤務の職場に勤めていたため土曜日一日働いた後の休み一日目。
「七夕だから何かテレビやってないかなー」と三重県のボロアパートでふと点けたテレビ愛知で偶然放送されていた「キラッとプリ☆チャン」を観て、「アニメ業界には、こんなに面白い話を作れるやつがいるんだ!自分も作家になって、自分が持っている「面白い!」をみんなに届けたい!!」と一念発起して、親に頭を下げて派遣切りからの転職活動を止めて冬から作家業へと専念しました。
あれから三年。
結局一度も栄光を掴めないまま作家人生が終わりそうです……。
7月8日の夜、休み明けが夜勤だったのもあって、昼勤から夜勤へと生活リズムを変えるために一日起きていたのですが、その時に近くの公園のベンチで寝転がって観た天の川はとても綺麗でした。
ではまた!これからもよろしくお願いします!!




