表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/126

第81話:妖術王妃アラキラ

「いらっしゃい!注文は聞きに行くから適当な席に行ってくれよ!」


 その女性は声を掛けられるとずるずると下半身を引き摺ると店の中へと入っていく。


「おっ!嬢ちゃん獣人族か?しかも蛇型獣人とは何だか珍しいな!!」

「えへへ。そうでしょう?よく言われるんだよねー」

「ギリシャ神話だっけ?に出てくるラミアみたいだな!で、注文は何にする?」

「勇者レオルス」


 何かのメニューの聞き間違いかと思った。フィンガーボウルを机の上に置きながらもう一度女がメニューを口に出すのを待つと、


「勇者レオルスって何処にいるの?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……テメェ、何でそのことを知っている?」

「決まっているでしょ?一連の首謀者がアタシだったからさ!!」


 がたり、という音に一瞥すると、ヘイムダルが控え室から出てきたところだった。


「今すぐレオルスがいる所に案内してよ。じゃないと何も事情を知らない客が何人か死ぬことになるかもね?」


 まるで世間話をするかのようなトーンで話しているため、周りの客は『物珍しい客』くらいにしか思っていないらしい。

 大事にしたくないのか、それとも自身の優位性を保ちたいのか。


 聖剣を奪取した者がどちらの思考で動いているのかなど明白だ。


「ここにはいねえ。オレが案内してやるからついて来い」

「レオルスって言ったな?だったら『煌々(こうこう)たる裁きの剣』の現ギルドメンバーであるあたしにも無関係じゃないな?勝手について行かせてもらうぜ?」

「えっ?!僕一人で店番するのかい?!!料理なんて心得てないんだけど?!!」

「心配すんな。レオルスと殺った時とは違って、案内が終わったら帰って来る予定だぜ?それまでの辛抱だ」

「アタシはレオルスたちにしか興味がないからねー。変なことをしない限りは君には手を挙げないつもりだよ?」


 今日もレオルスは小屋で隠遁生活を送っているため、ガルシャを先頭にアラキラ、最後尾にトルーニが続く。

 ヴィーザルが(ヘルム)の下で鋭い眼光を飛ばすのを横目に見て動物園を縦断し、草葉を分け入って森の中へと入って行く。


「へえ、魔王ロザス様を斃して一時代を築いた勇者様がこんな所に住んでいるんだねえ」

「……場所を他人にバラしたらテメェを食肉みたいにバラしてやるからな」

「心配ないって。君を除けばこの森から出られるのはアタシか勇者の生きている方だけなんだからさ」


 これから命を懸けた戦いだというのに、何故こんなに飄々としていられるのか。


 そういう性格なのか、将又(はたまた)、絶対に勝てる戦略でもあるのか。

 その態度を不気味に思いつつも森の中を歩き、レオルスたちの住む小屋へと到着する。


「またお前か。店番は一体――」


 扉を開けた勇者が息を呑む。当然と言えば当然だろう。自分が殺したはずのモンスターが目の前にいるのだから。


「妖術王妃アラキラっ!?どうしてここに?!!」

「はぁい勇者様。死後の世界から帰って来たよ?」


 旧友に会うかのような軽々しい口調で接して来るが、「はいそうですか」とそれを受け止めるわけにはいかない。


「【ウロボロス】が使えないように、このおれが聖剣で真っ二つにぶった斬ってやったはずなんだが、どうして生きていられる?どうやって蘇ってきた?」


 左体側に佩いた剣を抜こうとしてないのに気づいて舌打ち。代わりに眼前の蛇女を()めつける。


「カロルの使った『リヴァイヴァル』で生き返ったのさ。便利なことに『リヴァイヴァル』は身体の一部が残っていればそこから再生できちゃうからね」

「ちっ。手応えがなかったから不審には思っていたけど、やっぱり死んでなかったのかあの骨」

「リッチは小箱に入った魔法の心臓を破壊しない限りは死なないからねえ。例えリライトで斬られたって復活できるんだってさ」


 二つに別れた舌の先をちろちろと覗かせながら言葉を続ける。


「それでどう?アタシからの贈り物は気に入ってくれた?聞いた話によると随分と疑っていたようだけど?」

「贈り物?貴様のような外道からは何も貰った記憶などないのだが?」

「あるでしょう?ほらそれだよ?」


 憎き敵の再来にラウンが牙噛(きが)む中、長い爪の生えた指で一人の男を指す。


「エウロだよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()勿論『リヴァイヴァル』でね」

「……何だと?」


 目の前で息絶えたはずの人間が蘇り、何事もなかったかのように生活する。

 そんなことがあり得るのかと思っていたが、アラキラからの説明で全て合点がいった。


 禁じられた魔法『リヴァイヴァル』。

 土属性・光属性・闇属性の三つを合成した魔法で、本来は凍傷・火傷・腐敗などにより切断することとなった指や手足を再生させる魔法である。

 土属性の魔法で欠損した人体のパーツを作成して接合し、光属性から『奇跡』・闇属性から『死』を象徴として抽出。過不足なく合成させることで再生させることができる。


 つまり、この技術を使えば理論上ではあるが、身体の一部から身体全体を復元させることで、死んだ人間を復活させることが可能なのだ。


「騙していて申し訳なかったよ。レオルス様」


 かつかつと靴を鳴らして脇を通り抜けるとアラキラの隣に並んでこちらに振り向く。


「生き返った時点で選択肢はなかったんだ。「聖剣を奪うために協力しろ。そうすればリルにもう一度合わせてやる。従わないならこの場でもう一度殺すだけだ」ってね。笑えるだろう?調和を愛するはずのエルフが己の命と色欲のために魔王軍に加担して、しかも仲間たちとの調和を乱してしまうなんて。これじゃあ死んだところで愛と縁の女神(クスペロール様)に叱られて、冥界の男神(デイト様)にお仕置きされてしまうかもしれないね」


 何処か呆れたように肩を竦める。


「聖剣が刃毀(はこぼ)れしているって話をしただろう?あれは隙を見てアラキラの体液を吸い込ませた布でブレード部分を触り、僕が工作したものだったんだ」

「ふぁあ……。難しい話ばかりだな。で、その復活した四天王様とやらが一体何の用だ。まさか、こんなつまらない手品の種明かしをしに来ただけってわけでもねぇよな?」


 退屈凌ぎに欠伸をしたトルーニがドラゴンの瞳を光らせる。


「勿論、君たちと戦いに来たのさ。君たち勇者一行にリベンジするためにね」

「おいおい。まさか剣撃王ゼルスみたいに、「お前たちは尊敬に値する好敵手だ。俺が必ずこの手で斃す」とか言い出すんじゃねぇだろうな?」

「あんなやつと一緒にしないでよ。純粋にそのままの意味だよ。君たちを斃して邪魔者を排除し、再び魔王軍が支配する世界にしたいのさ」

「そうかそうか。ならさっさと死んでくれ」

「できるのかい?」


 青い前髪が垂れ下がった顔で薄く笑う。


「あの時はリライトで胴体から真っ二つにしたから勝てたようなものだけど、今回はそのリライトがないんだよ?そんな君たちがどうやってアタシを斃すって言うんだい?」

「そっちこそ勘違いしてもらっちゃ困るな」


 周囲にシルフとアロアの(ともしび)を侍らせながらレオルスは答えを返す。


()()()()()()()()()()()()()()()()()世間じゃ魔法にも剣術にも長けた『魔導剣士』なんて呼ばれてたりするけどな!!」

「面白いねえ。その魔法とやらでアタシが倒せるっていうんならやってみてよ!!」



『煌々たる裁きの剣』と四天王の一人・妖術王妃アラキラ。

 勇者と魔王の戦いが誰も知らない土地で再燃する。

「なろう」にていいねが一件、ブックマークが一件増えました!いいね&ブックマークしてくださった方ありがとうございます!!



「PICKUPテーマ長編コンテスト」落ちました。


・最優秀賞作品……三作

・優秀賞該当……なし

・佳作……四作


 という分布になっているようで、「編集部の者たちが読んだ中でも個性が光る作品を選びました!!」という佳作の中に、幻獣が好きな王女様が幻獣動物園を造る話があるようです。本作品は惜しいところまでいっていたということなのか、「テメェの作品は平々凡々だよ!!」ということなのか。


 いずれにせよコンテスト落ちたのでここから話を畳んでいこうかと思っています。まずはコンテスト当てた時用に書いていた第91~96話をカット。新91話から完結に向けてクライマックスを一気に書いていきます。方向性を纏めて本作品を年内に完結させたら、後はダメ元でコピペした原稿を電撃大賞にぶん投げて終わりですね。


 今後は後書きに反省点やら裏設定やらをネチネチ書いていこうかと思います。読者の皆様お疲れ様でした。書籍化の可能性は潰えましたよ……。



 ではまた!これからもよろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ